卒業式の日、私はほとんど覚えていない出来事がありました。
あとから親に聞かされて、初めて意味を知ります。
「そんなことあったっけ?」
親にしてみれば、担任でもなかった先生が花束を手に教え子でもない私たちを待ってくれていた姿が、強く印象に残っていたようです。
『卒業おめでとう』
花にはカードが添えられており、中学校の担任だったA先生とその奥様である先生の名前が連名で書かれていたそうです。
親の記憶
母の言葉で、ようやく当時の光景を想像しました。
式のあと、友人との別れを惜しみ、写真を撮るのに夢中だった私たち。きっと、差し出された花束を反射的に受け取り、深く考えないまま次の友達のもとへ駆け寄ってしまったのでしょう。
一方で、母たちはその様子を今でもはっきり覚えていました。
「どちらの先生にも、大切にしてもらったよね」
母は今でもその時の様子をはっきりと、愛おしそうに覚えています。
廊下ですれ違う時に交わした、たった数秒の挨拶。
「先生、元気?」という気さくな一言が、実は先生の心に温かな灯をともしていたのかもしれない。そして、先生が返してくれた「おめでとう」の想いを、親がずっと大切に心に留めていてくれた。
あとから知ったその事実に、私の胸の奥はじんわりと熱くなりました。
気づかないうちに誰かに見守られ、大切にされていた。そんな「見えない贈り物」が、大人になった今の私をそっと支えてくれているような気がします。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。