介護施設に入所したアメリカ人男性Aさんへの対応は、もっぱら翻訳アプリ頼み。そんな中、何十年も使っていない「錆びついた英語」で私が話しかけてみると……? 友人が体験談を語ってくれました。

勇気を出した私の“カタコト英語”

それでも、Aさんの担当になったとき、勇気を出して話しかけてみたのです。

お世辞にも上手とは言えない、カタコトの英語で。

すると、Aさんはパァっと顔を輝かせ、身を乗り出してきました。

「英語が話せるの?」と。

私が「昔、少しだけ留学していて。ほんのちょっとですけど」と伝えると、Aさんは堰を切ったように、自分がどうしてここに来たのか、家族のこと、今の気持ちを、生き生きと語り始めたのです。

「うれしい。自分の言葉で会話ができるのは、本当にうれしいよ」

満面の笑みでそう話すAさん。

私の錆びついた英語が、最強のケアに

翻訳アプリを使えば意味は通じます。

でも、異国の地で要介護となり、心細い思いをしていたAさんが求めていたのは、正確な翻訳ではなく「心の通う会話」だったのです。

Aさんは私の拙い英語を、「彼女はとっても英語が上手だよ」と、まるで自分のことのように周囲に自慢してくれるのでした。

何十年も眠っていた私のスキルが、こんな形で誰かの心を救うなんて。

「もっと話したい。Aさんの言葉を分かりたい」と、私は久しぶりに英会話の本を買いました。

私の介護士としての新たな武器は、この「錆びついた英語」になりそうです。

【体験者:30代・女性介護士、回答時期:2026年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。