ついに限界がきた瞬間
その翌日、リビングに置かれた夫のポケットから、小さなメモが落ちているのに気づきました。
拾ってしまったのは偶然ですが、そこには「疲れている時に話しかけられるとイライラする」と自分宛てに書かれたメモがありました。
思わず目を見開き、膝の力が抜けたように座り込みました。
「なら、どうして話してくれないの……」声にならない呟きがこぼれました。
私の気遣いは全部空回りしていたのかもしれない。
夫の冷め切った行動に耐えてきたつもりでしたが、そのメモを見た瞬間、私は心の糸がぷつんと切れたような感覚になりました。
その夜は胸が痛くて眠れず、布団の中で何度も深呼吸を繰り返しました。
ようやく届いた本音
次の日、私は仕事から帰ると意を決して「最近どうしてそんなにきついの? 今のままだと、私はあなたと一緒にいるのが苦しいよ」と聞きました。
夫はしばらく黙ったあと、思い詰めたように「本当は……仕事で大きなミスして、家でも普通に振る舞えなくて」と言いました。
さらに「A子の声を聞くと安心するのに、余裕がないと逆にしんどく感じてしまって、どう伝えていいか分からなかった」と続けました。
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじわっと熱くなり、「そんなふうに思ってたんだ」と涙がこぼれました。
冷め切っていると思っていた行動は、ただの不器用さと苦しさだったのだと気づきました。
もちろん、仕事が大変だからといって、人を傷つけていい理由にはなりません。そのことは夫にもしっかり伝えました。夫も「言い過ぎた。これからは言葉にする」と謝ってくれました。
私たちは久しぶりに向き合いながら話し、行き違いだった想いを少しずつ埋めていきました。
あの数日間の不安はつらかったけれど、今は仲良く、自分の気持ちを飲み込まずに伝えるという踏み出した一歩が夫婦の空気を少し変えてくれたのです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。