筆者の話です。
祖父の詩吟が苦手で、自分の結婚披露宴には入れないと決めていました。
けれど、ある話を聞いたことで、考えが静かに変わっていきます。
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詩吟の時間

「早く終わらないかな」
子どもの頃、親族の結婚披露宴で祖父が詩吟を披露するたび、私は心の中でそう思っていました。
独特の節回しに、難しい言葉が続き、正直子どもにはよくわかりません。

詩吟には伴奏もないので、祖父の声だけが会場に響きます。
会場の空気が一瞬止まったように感じる時間も、少し気まずく思えていました。
詩吟は祖父の長年の趣味で、親族の披露宴では必ず披露されるのが、いつの間にか当たり前になっていたのです。

外した理由

大人になり、同級生の従姉妹と式の話をする機会がありました。
「自分たちの結婚式では、祖父の詩吟だけは入れないようにしよう」
自然と、そんな言葉が出ました。

二人とも、音楽や演出にこだわった、おしゃれなウエディングパーティに憧れていたからです。
祖父の詩吟は、そのイメージとは少し違う気がしていました。
その場では、理想の式を作りたいという思いで、意見が一致していました。

当日の追加

ところが、私より一年早く結婚した従姉妹の披露宴では、事前に外したはずの詩吟が、当日、プログラムに追加されていました。
親族の強い希望だったそうです。

披露宴のあと、祖父は
「聞いてたら練習したり、お酒を控えたりしたのにな」
と話していました。
その表情はどこか誇らしげで、こだわりを持って準備してきた従姉妹が少し困惑したような顔をしていたのも、今となっては理解できます。