仕方なく、私はベッドから降りて、床に寝転がって暴れる長男のところに行き、抱き上げようとしました。
その瞬間。
「ピキッ」
何かが引っ張られるような音が聞こえました。
そして、下腹部に鋭い痛みが走りました。
「痛っ!」
慌てて傷を見ると、案の定、血が滲んでいました。
帝王切開の傷の縫合部分が、裂けかけていたのです。
私は、ナースコールを押すと看護師さんが駆けつけてくれました。
「どうされました?」
「傷が、血が出てしまって」
そう言うと看護師さんは、傷を確認して顔色を変えました。
「これ、無理に動いたでしょ? 今すぐ処置します!」
私は、緊急で処置を受けることになりました。
処置が終わった後、看護師さんが夫に厳しく言いました。
「帝王切開は、お腹を切る大きな手術です。産後1週間は、絶対安静が必要なんです。奥様に、無理をさせないでください!」
夫は、バツの悪そうな顔をしていましたが看護師さんは続けました。
「お子さんがパニックを起こした時は、ご主人が対応してください。奥様は今、安静が必要です」
「分かりました」
不満そうに夫は答えましたが、ようやく事の重大さに気づいたようでした。
私は、心の中で「この夫とはもうやっていけない」と思いました。
母の怒り
退院後、私は自宅に戻りました。
私の母が私の出産の手伝いに来てくれた際、母は、私の傷を見て怒り出しました。
「これは、ひどいわ。何でこんなになるまで無理したの?」
「夫が『母親なら抱っこしろ』って言ったから」
母は、怒りの表情で夫に向き直り
「あなた、何考えてるの! 娘が帝王切開の手術をしたばかりなのに、パニックで暴れている孫を抱っこさせるなんて!」と一喝しました。
「いや、その……」と慌てふためく夫。
「もう二度と、そういう無理をさせないで。できないなら、離婚も考えてもらいますからね!」
母の言葉に、夫は黙り込みました。
私の言いたかったことを、そのまま代弁してくれた母には感謝しかありません。
その後、夫は私の母に怒られながら、子育てや家事の仕方のレクチャーを受けていました。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。