きれいなお花
しかし一つだけ困ったのは、Tさんのご家族が「おばあちゃんはお花が好きだったから」と必ず花束を持ってきて、部屋に飾ろうとすることでした。
Tさんのお部屋は4人部屋で、他の利用者の方と同室。
利用者の中には、徘徊して食べ物以外を口にしてしまう症状を持つ方もいたため、施設内では誤飲や怪我を未然に防ぐため、花や飾りなどの設置は原則認められていなかったのです。
ご家族としての気持ちは理解できたのですが、実際にTさんが枕元に飾ってあったお花を食べてしまったり、他の利用者さんがはずみで花瓶を落として割れてしまったりしたことがありました。
一歩間違えれば、他の入居者様にも怪我をさせてしまいかねない状況に、現場には緊張が走りました。
担当として、ご家族には何度も「ご遠慮願いたい」と丁重にお話をしました。しかし「これくらいなら」というご家族の思いとなかなか折り合いがつかず、当時はその歩み寄りの難しさに苦労したのです。
入居者の安全
他にも、ご家族が良かれと思ってしたことが、施設のルール上はNG行為だったという事例は多くありました。
食事管理が必要な利用者さんに、差し入れのお菓子を食べさせてしまうこと。
身体の状態に合わないリハビリを良かれと思ってさせてしまうこと。
職員への過度な心づけを持参すること。
各施設にはルールがあり、入居している他の利用者さんの安全も考えると、自己判断で行ってはいけない行為がたくさんあります。
「おばあちゃんに喜んでほしい」というご家族の願いは、私たち職員も同じです。だからこそ、施設のルールはきちんと確認し、その理由をぜひ職員に聞いてみてください。安全を守りながら、別の形でその愛情を届ける方法を、一緒に見つけていければと願っています。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:RIE.K
国文科を卒業しOLをしていたが、父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄、多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。シングルマザーとして子どもを養うために、さまざまな仕事の経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。