不審な電話
姉のA子は大学時代、医学部の学生と交際していました。
当時、私は高校生でした。
ある日、自宅の電話が鳴り、受話器を取ると男性の声がしました。
「A子、いる?」
つっけんどんな、命令するような口調。
挨拶もなく、名乗りもしません。
私はこの電話を掛けてきた人物が姉の彼だとは知らず、不審者ではないかと思ったので「いません」と答えて、電話を切りました。
その日の夜、姉が険しい顔で私の部屋に入ってきました。
「ちょっと、あんた! 彼からの電話、なんで切ったの!」
「え? あれ、姉ちゃんの彼だったの? 名前を名乗らないし、いきなり呼び捨てだったから不審者かと思ったんだけど?」
「彼が怒ってたよ!『A子の妹はしつけが悪い!』って!」
「しつけが悪い?」
私は絶句しました。
名乗りもせず、挨拶もせず、いきなり姉を呼び捨てにした相手が、私の対応を「しつけが悪い」と非難するとは。
さらに、姉は怒って捲し立てます。
「彼、都内の私立エリート高校出身で、お家も裕福なの。礼儀にうるさい人なのよ!」
「いいから! 次からはちゃんと対応しなさいよね!」
姉はそう言って部屋を出て行きました。
私は納得がいきませんでしたが、姉はその彼氏にすっかり惚れ込んでいるようで、何を言っても耳を貸そうとはしませんでした。
自慢話と上から目線
それから、姉の彼は毎週末に家に来るようになり、来る度に自慢話が始まります。
「俺の出身高校、偏差値70超えてたからさ」
「うちの親父、色々事業をしてるんだよね」
「医学部って大変だけど、まあ俺には余裕だったかな」
姉は彼の話にうっとりと耳を傾けていましたが、私は心底うんざりしていました。
彼は私に対して常に上から目線でした。
「A子の妹、どこの高校行ってるの? ああ、公立か。まあ、頑張ってね」
「大学、どこ目指してるの? え、その大学? 悪くないけどレベル低いよね」
姉は彼の言葉に何も言わず、笑って相槌を打っていました。
私は、この人と姉が結婚しなければいいのにと心から思っていました。