筆者の話です。
父の定年を祝う、ささやかな家族の集まりでのこと。
母が差し出した一通の封筒に、思いがけず手が止まりました。

退職祝い

父の定年退職を機に、実家で家族そろって簡単な”お疲れさま会”を開きました。
外食ではなく、いつもの食卓に母の手料理が並ぶ、静かな集まりです。
父は少し照れた様子でグラスを手にし、弟と夫も、お祝いする気持ちで席についていました。
大げさなことはせず、ただ一区切りを家族と共有する時間でした。

封筒の数

「今までありがとう」
食事がひと段落したころ、両親は私と弟にそれぞれ封筒を差し出しました。
お礼と書かれた封筒の中身は現金10万円。
思わず言葉を失い「こんなにいらないよ」と返そうとしましたが、父は何も言わず、ただうなずいています。

どう受け取ればいいのか迷っていると、母はさらにもう一通、封筒を手に取りました。
その封筒を、母は迷いなく夫の前に置いたのです。