筆者友人A子の話。寝不足の朝、保育園へ向かうエレベーターで耳にした「夜泣きがなかった」「手がかからない」という他愛ない会話。比べられたわけではないのに、昨夜を必死に乗り越えた自分が否定されたような気持ちになった彼女が、ふと気づいた大切なこととは――

ただ「違う夜」それだけだった

けれど、ふと気づいたのです。
これは優劣ではない。ただ「違う夜」だったのだと。

手のかからない子が偉いわけでも、手のかかる子がダメなわけでもない。
彼女たちには彼女たちの夜があり、私には私の夜がある。
ただそれだけのこと。

「手がかからない」と言われる側の世界もあれば、そうではない側の世界線もある。
確かにここには、孤独で、疲れて、報われないように感じる夜があります。
でもそれも、確実に、その子とママの大切な時間なのです。

そっと肯定できた朝

一階に着く頃、張りつめていた心が少し緩んでいました。
抱っこ紐の中で眠る我が子の背中を、そっと撫でます。

「大変だね」と誰かに言われなくても、何度も何度も夜を越えてきた事実。
その重みを、そっと肯定しようと思えた瞬間でした。

誰かと比べる必要なんてなかったのです。
この子の夜泣きも、この疲れも、全部この子との物語の一部なのだから。
今日もまた、私たちの夜は続いていく——それでいい。

初めて心からそう思えた朝のことでした。

【体験者:30代・女性・会社員、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。