突然の「限界」宣言
ところが就職活動の時期、息子は突然、部屋に閉じこもるようになってしまったのです。
「一体どうしたの?」「何かあった?」と答えを急かす私に、息子は力なく「もう誰の期待にも応えたくない……」と答えました。
息子の悲痛な声を聞き、血の気が引きました。
私はずっと、息子の「なりたい未来」よりも、「失敗しない道」ばかりを押しつけていた、と気づいたのです。
息子が自ら選んだ意外な道
思い返せば、あの高額な塾代を、家族旅行や、ただのんびり過ごす時間に使っていたら、息子の心をこれほどまでに追い詰めずに済んだのかもしれません。
息子は、自分を守る方法も、しんどい時に立ち止まる術も知らないまま、大人になってしまいました。
今さらですが深く後悔した私は、それからの3年間、将来の話を一切せず、ただ「元気でいてくれればいい」と願いながら、毎日ごはんを作り続けました。「何か言わなきゃ」と焦る気持ちを抑え、ただ見守る。それは、勉強をさせることよりもずっと忍耐が必要な時間でした。
するとある日、息子が「伯父さんの園芸店でバイトをしたい」と言い出したのです。
私は兄に頼み、息子をアルバイトで雇ってもらうことにしました。
本当のゴールとは
現在、息子はそのまま園芸店に就職し、生き生きと働いています。
私は教育を「投資」だと勘違いしていましたが、本来は「その子が自分の人生を愛せるようになるための手助け」であるべきでした。
親の描く「正解」ではなく、本人が笑顔で過ごせる場所こそが、その子にとっての本当のゴールなのだと、今は心から思っています。
【体験者:50代・女性会社員、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。