これは、知人のA子さんに聞いたお話です。
コールセンターで働く彼女が遭遇した、ある「理知的な」男性客がいました。
理不尽な怒りをぶつけてきた彼が、自らの言葉で勘違いに気づき、思わぬ形で幕を閉じた結末に!? 現場の緊張がふっと緩んだエピソードをご紹介します。

怒りの矛先が……? 鮮やかすぎる「気づき」の瞬間

「いいですか、あの時あなたは『Aの操作をしてください』と言った。でも俺は、あれ?」怒りに任せて論理を展開していた男性の言葉が、ふと止まりました。

「確かにこの時、こう言ったな……あ、最初から言ってたかも」受話器の向こうで、男性の独り言が漏れ聞こえてきます。

男性は自分の記憶と論理を必死に組み立てようとすればするほど、A子さんの案内が最初から一貫して正しかったことを、自ら証明してしまったのです。
沈黙が流れます。「あ、やっぱりお姉さんが正しかった。ごめんなさい」さっきまでの威勢はどこへやら、消え入りそうな声で謝罪の言葉が紡がれました。

自分の主張を裏付けるはずの検証作業が、まさかの「自己完結」で終了してしまった気恥ずかしさからか、男性は「失礼しました」と早口で告げると、電話を切りました。あまりの急展開に、A子さんは怒る気力も失せ、呆気に取られてしまったそうです。

人間だもの、パニックも起こす? 怒りの後の静寂と苦笑い

受話器を置いた後、A子さんの中に湧き上がってきたのは、怒りでも安堵でもなく、「苦笑い」でした。「人間、パニックになると自分で自分を追い詰めちゃうのね」あんなに理路整然と話していた男性が、感情的になった途端に自分の論理で躓いてしまう。その姿には、どこか人間臭い「可愛げ」すら感じられました。

おそらく男性も、システム障害で仕事が止まり、相当に焦っていたのでしょう。クレーム対応は精神をすり減らす大変な仕事ですが、時にはこんなふうに、相手が自ら冷静さを取り戻して終わることもあるのです。

理不尽な怒りが思いがけない形で収束したこの一件は、殺伐としたコールセンターの中で、A子さんにとって少しだけ心が緩む、忘れられないエピソードとなりました。完璧に見える人でも、余裕がなくなると失敗してしまうもの。そう思うと、他人の失敗にも少しだけ寛容になれる気がしませんか?

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:日向みなみ
出産を機に、子どもとの時間を最優先できる働き方を模索し、未経験からWebライターの世界へ。ライター歴10年の現在は、オンライン秘書としても活動の幅を広げている。自身の経験を元に、子育てや仕事に奮闘する中で生まれる日々の「あるある」や「モヤモヤ」をテーマに、読者のみなさんと一緒に笑って乗り越えるよう、前向きな気持ちになれるコラムを執筆中。