空気を変えた、たった一言
そのとき、近くに立っていた50代くらいの女性が、にこやかに女の子たちへ声をかけました。
「ねぇ、お嬢ちゃんたち」
(注意するのかな)と思った私。
━━しかし続いた言葉は意外なものでした。
「楽しそうだね。その歌、懐かしいわぁ。どうやるんだっけ?」
女の子たちは一気に表情を輝かせ、「これね、こうして、こうして」と夢中で説明し始めます。
すると女性は、少し声を落として言いました。
「ほら、寝てる人もいるみたいだし、コソコソ話にしない?」
「そっか」
女の子たちは顔を見合わせ、「じゃあ……コソコソ」と小さな声に切り替えました。
叱らずに伝えるという選択
さっきまでざわついていた車内には、穏やかな静けさが戻りました。
女の子のお母さんは、ハッとしたように何度もその女性に頭を下げてお礼を伝えていました。
私も心の中で、思わず「ありがとうございます」とつぶやきました。
頭ごなしに叱るのではなく、まず相手に寄り添い、仲良くなり、自然に周囲へ目を向けさせる。
「ステキな女性だなぁ。私もいつか、あんなふうに空気をやさしく変えられる大人でありたい」
そう思わせてくれた、忘れられない出来事でした。
【体験者:50代・筆者 回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒヤリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大下ユウ
歯科衛生士として長年活躍後、一般事務、そして子育てを経て再び歯科衛生士に復帰。その後、自身の経験を活かし、対人関係の仕事とは真逆の在宅ワークであるWebライターに挑戦。現在は、歯科・医療関係、占い、子育て、料理といった幅広いジャンルで、自身の経験や家族・友人へのヒアリングを通して、読者の心に響く記事を執筆中。