育児か、仕事か。その選択で苦しみ続けた知人から聞いた、少し胸が締め付けられるお話を紹介します。

断れない性格

私は小さいときから気弱な性格でした。
人にお願いされると断れず、本心では「やりたくない」と思っていても引き受けてしまう。
そんな自分が嫌でした。

そんな私も母親に。
出産前に職場を退職し、育児に専念することにしました。

それに、初めての我が子は目に入れても痛くないくらい、とても可愛い。
育児にも向いていたようで、赤ちゃんと2人きりで過ごす毎日も苦痛ではありませんでした。

「復職してくれないか」

我が子が生後半年を迎えたころ、元職場から電話がありました。
出てみると、元上司の声。

「人が足りないの。復職する気はない?」
そう元上司は言いましたが、私は復職なんてまだ考えられません。
「子どもの保育園も決まっていないので、今すぐというわけには行きませんけど……もう少し落ち着いたら考えてみます」

私はそう答えたのですが、元上司は、
「お願い! 会社のこと分かっている人はあなたしかいないし、助けると思って戻って来てほしい」
「保育園探しにも協力する!」
と強くお願いしてきます。

本当はもう少し育児に専念していたい。それが本心でしたが、「困っているなら。手助けになるなら」と私の心は揺れました。

「お願い!」
そう言って黙り込む元上司。きっと電話の向こうで頭を下げているのでしょう。
「……分かりました」
私はそう答えてしまったのです。