危険な行動
祖母は、その洗剤が入ったマグカップを、ゆっくりと口元へ近づけたのです。
「まさか!」と思った瞬間、頭が真っ白になりました。危ないと分かっているのに、あまりの衝撃に声が出ません。体も動かず、その場に立ち尽くしていました。
当時の私は、それが認知症の症状だとは知りません。ただ、目の前の光景を理解できず、ただ呆然とするしかなかったのです。
直後、祖母が激しくむせ込みました。
聞いたことのない苦しそうな声。その異変に親が気づき、すぐに病院へ向かうことになったのです。
動けなかった後悔と、車中での恐怖
「私のせいで、死んでしまったらどうしよう」と、震えたのを覚えています。
自分の無力さが怖くてたまりませんでした。
幸い、祖母は大事には至りませんでした。
迅速に受診したことが、何よりの救いだったと聞きました。
帰りの車中で、父から認知症について詳しく聞きました。
ショックはありましたが、これからはただ見守るだけでなく、少しの異変にも気づき、すぐ助けようと思いました。
忘れられない出来事が、今の私に残したもの
あれから年月が経ち、今は自分の親が、あの頃の祖母の年齢に近づきつつあります。
まだ元気でしっかりしていますが、判断に迷う場面が増え、動作も以前よりゆっくりになった印象です。
今でもふと、あの台所の光景が頭をよぎります。
だから私は、できるだけそばで様子を見守るようにしています。
「気のせいかも」と流さず、少しでもおかしいと思ったら声をかけ、行動する。あの時知識がなくてできなかった分まで、今度こそ迷わず動きたいのです。
祖母のエピソードは、これからの向き合い方を教えてくれました。その教訓を、今は自分の親に重ねています。そしてこの経験が、同じような不安を抱える誰かの一歩につながればと願っています。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。