長年、男手ひとつで育ててくれたお父さんを亡くしたA子さん。
遺品整理をしていたところ、見知らぬ女性との長年にわたる手紙のやりとりを見つけます。
知らなかった、父の想いとは──。
封じられていた、父の想い
手紙の女性はD子さんといって、すでに結婚されているようでした。
迷った末、私はD子さんに、父が亡くなったことを知らせる手紙を出すと、すぐに返信がありました。
お線香をあげにきてくださったD子さんは、柔らかい物腰の、品のある方でした。
そんな彼女に、私は思い切って聞いてみたのです。
「失礼でしたらすみません。父は……あなたのことが好きだったのではないでしょうか」
D子さんは、はっとした顔をしたかと思うと、静かに涙を流しました。
「一度も想いを伝えてくださいませんでした。だから私たちは、ただのお友達よ」
ハンカチで涙を拭って、少し寂しそうに笑うと、D子さんは続けました。
「お父さんが一番大切にしていたのは、あなたよ。いつも、嬉しそうにあなたの話をしていたわ。あなたの存在が、お父さんの人生を幸せなものにしていたのよ」
恋を諦めさせて、ごめん
私は、どれほど深く父に愛されていたのでしょう。
幼かったあの頃の自分に戻れるなら、思いきり父に甘えて、抱きしめて、言いたい。
「お父さん、ありがとう」
「大好きだよ」
「お父さんも、幸せになっていいんだよ」
「また恋をしても、いいんだよ」
最後まで、私だけの父親であろうとしたお父さん。
恋を諦めさせて、本当にごめんなさい。
次に会うときは、いっぱいのごめんとありがとうを伝えたい。
それまでは、お父さんの深く優しい愛情を抱えて、精一杯生きていこうと思います。
【体験者:50代女性・専業主婦、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。