長年、男手ひとつで育ててくれたお父さんを亡くしたA子さん。
遺品整理をしていたところ、見知らぬ女性との長年にわたる手紙のやりとりを見つけます。
知らなかった、父の想いとは──。
父の遺品整理で、見つけたラブレター
もう40年も前のこと、中学生だった私は、早くに母を亡くしました。
母のことが大好きだった私は、突然の別れを受け入れられず、世界が色を失ってしまったかのように感じたことを覚えています。
それからというもの、男手ひとつで私を育ててくれた父。
不器用で口数は少ない人でしたが、いつも私のことを最優先に考えてくれていました。
母がいなくても、困ることなく育ててくれたことに、とても感謝しています。
そんな父も、つい先日、亡くなりました。
「ついに両親とも、いなくなってしまった」
葬儀を終え、ぼんやりと遺品整理をしていたときのことです。
引き出しの奥から、何十年分もの年賀状や、手紙の束が出てきました。
差出人は、見覚えのない女性の名前。
読んでみると、恋文というわけではなく、季節の挨拶や日々の出来事などを綴った、穏やかなやり取りでした。
でも私は、直感的に思ったのです。
父は、この人のことが好きだったのではないかしら。
そしておそらく、相手の女性も──。
あの日の記憶
ふと思い出したのは、母が亡くなってから数年経った頃のこと。
ある日、父が女性を家に連れてきたことがありました。
そのことに、私は大変なショックを受けたのです。
「新しいお母さんなんていらない! お父さんの裏切り者! お母さんがかわいそうじゃない!」
反抗期も相まって、泣き叫びながら、激しく父を責め立てた記憶があります。
父は何も言い返さず、「ごめんな、父さんが悪かった」と私に謝りました。
その後すぐ、女性とは別れたようでしたが、あのときの父の悲しそうな顔は、今でも覚えています。
もしかしたら、あのときから父は、自分の恋を諦めてしまったのかもしれません。
娘の私を傷つけないために。
当時の私は、父の気持ちを想像する余裕など、ありませんでした。
自分だけが傷つけられたように思っていて、本当に子どもだったのです。