これは筆者である私自身の体験です。社会人3年目、背伸びした出費が重なって家賃が払えず、つい友人からお金を借りてしまいました。情けなさに沈んだ夜、父の口癖「金は借りるな」を思い出し、返したあとに父からかけられた言葉で“次にどうするか”を考え直した出来事です。

友人に「1万円だけ……」→胸がざわつく

親に頼るのはプライドが許さず、大学時代からの友人に連絡しました。
「ごめん、1万円だけ貸してもらえないかな……」
すぐに「いいよ。どうしたの?」と返ってきて、救われたはずなのに、同時に情けなさが押し寄せました。“私、何やってるんだろう”と。信頼という目に見えない貯金を、自分の不摂生で切り崩してしまったような感覚でした。

夢の中で、あの言葉が刺さった

その夜、実家の夢を見ました。リビングで新聞を読む父が、ぽつりと呟きます。
「金は借りるな。借りた瞬間、対等な関係じゃなくなるんだ」
目が覚めると、心がズシンと重くなりました。借りた1万円が、金額以上に“自分のだらしなさの証拠”のように感じました。

返したあとも消えない後ろめたさ

給料日になると、すぐに借りたお金を返済し、お礼としてコーヒーセットも渡しました。友人は笑って「気にしないで」と言ってくれたけれど、その優しさが余計に申し訳なく感じました。「借りないこと」は、自分だけでなく相手への敬意でもあるのだと痛感しました。

実家で告白、父がくれた答え

週末、実家に帰って父と散歩しながら正直に話しました。父は一瞬足を止め、「そうか」とだけ言ってから続けました。
「借りるなって言ったけどな、返したならいい。大事なのは“次にどうするか”だ」
その時初めて、あの言葉が命令じゃなく、かつて同じように苦労したかもしれない父の経験から出た願いだったと分かりました。今はまだ背伸びをする時期じゃない。まずは自分の足元をしっかりと見つめ、分相応の幸せを大切にしよう。そう決めた出来事でした。

【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:北田怜子
経理事務・営業事務・百貨店販売などを経て、現在はWEBライターとして活動中。出産をきっかけに「家事や育児と両立しながら、自宅でできる仕事を」と考え、ライターの道へ。自身の経験を活かしながら幅広く情報収集を行い、リアルで共感を呼ぶ記事執筆を心がけている。子育て・恋愛・美容を中心に、女性の毎日に寄り添う記事を多数執筆。複数のメディアや自身のSNSでも積極的に情報を発信している。