差し出された手紙
そのとき、上の子が一枚の紙を持ってきました。
「ママに、お手紙かいたの!」
料理の手を止め、紙を受け取ります。そこには、まだ形が安定しない、いわゆる“ミミズ文字”。読めそうで、読めない。しばらく首をかしげてしまいました。
「これ、なんて書いてあるの?」
そう聞くと、娘は少し誇らしげな顔で、はっきりと言いました。
「ママ、えがお!」
「ああ、見られていたのだな」 胸の奥を、ギュッとつかまれたような気がしました。
慌ただしさに飲み込まれて、怖い顔をしていた私。笑ってほしいと願って、この文字を書いてくれたのだと思うと、自然と口角があがっていました。
小さな応援団
それ以来、全部を一度に片づけようとするのをやめました。
「まずは、ひとつずつ」
そう言い聞かせるだけで、肩の力が抜けます。怖い顔になるくらいなら「今日はここまででいいか」と思える余裕も、戻ってきました。
その“ミミズ文字”の「えがお」は、冷蔵庫の一番いい場所に貼っています。
疲れている日ほど目に入り、「笑って」と静かに背中を押されるような気がします。
忙しい毎日の中に、小さな応援団がそばにいる。そのことに、今日もまた励まされています。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。