筆者の父が入院したときのこと。手術や環境の変化による一時的な混乱から、筆者のことを認識できなくなっていました。それでも不思議と悲しさはなくて……?
厳格だった父が見せたまさかの姿
高齢の父が体調を崩し、入院したときのことです。
手術や環境の変化による一時的な混乱から、私のことを認識できなくなっていました。
食事を終えた父に「おいしかった?」と声をかけると、「おいしゅうございました。ありがとうございました」と、丁寧すぎるほどのお礼が返ってきます。
歯磨きを手伝ったときも、同じ調子で深々と頭を下げるのです。
どうやら私のことを、看護師さんか介護士さんと勘違いしていたようでした。
それまで想像していた「忘れられるショック」を、不思議と感じる暇もありませんでした。
“怖かった父”とはまるで別人
子どもの頃の父は、厳格で、正直少し近寄りがたい存在でした。
挨拶や礼儀には誰よりも厳しく、家の中にはいつもピリッとした緊張感が漂っていたものです。
しかし今、私を娘だと認識できていない父は、どこか他人行儀で、どこか可愛らしい。
“怖かった父”とは別の優しい人物に出会ったような、不思議な感覚になりました。