筆者の話です。
夜、島に帰るためにタクシーへ乗り込んだ私は、運転手さんに海上タクシーの手配をお願いしました。そこで返ってきた一言から、思いがけない『つながり』が広がっていき──。

広がる話題

「Aのほうです」と答えると「ああ、僕もそっちの出身なんよ」と運転手さんが笑いました。
その瞬間に空気がふわっとゆるみ、地名がひとつ出るたびに話が自然と広がっていきます。

いつもなら静かで長く感じる夜道なのに、この日は言葉が途切れません。
「お父さんの名前なんて言うの?」と聞かれ、伝えると、なんと父の同級生だったことが判明。
思わぬつながりに、胸の奥がじんわり温かくなりました。

父の昔話

父は途中で別の中学へ移ったため、頻繁に一緒にいたわけではなかったようですが「よう覚えとるよ」と運転手さんは懐かしそうに話し始めました。

泳ぎが得意ではなく、一緒に練習したこと。
自転車ごと海に落ち、びしょ濡れのまま大笑いしたこと。
知らない父の姿が、次々と目の前に浮かんできます。

懐かしむような声につられ、私まで胸が熱くなりました。
気づけば、長いはずの道のりがあっという間でした。

つながる温度

港へ着くと、運転手さんは「せっかく帰ってきたんだから」とキャンディをおまけしてくれました。
家に戻って父へ話すと「おー、あいつタクシーしよるんか。元気やったか?」と嬉しそうな笑顔。
偶然の出会いなのに、どこか必然のようにも感じられ、島で育った人同士のあたたかい距離感を思い出しました。
夜風に吹かれながら帰る道のりまで、やさしく感じた出来事でした。

【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。