冬になると食べたくなるのが「おでん」ですよね。具材のバラエティも豊かですし、食べると体が温まります。そんなおでんも、一部では「ご飯に合わない」「手抜き料理」といわれることがあるようです。今回はそんなおでんがきっかけで、旦那さんの家事に対する思い込みを正した経験のある筆者の知人、Oさんのお話です。

「え、こんなに工程多いの? おでんなのに?」
旦那さんは驚いた様子で読み始め、ハッと何かを思い出したような表情を浮かべました。

「俺はずっと母さんに、おでんなんか作って手抜きするなって言ってた。まさかこんなに大変だったなんて」
旦那さんは絶句したまま涙を浮かべ、ノートを握りしめました。自分が「手抜き」だと切り捨ててきたものが、実はどれほどの時間と想いで作られていたのか。亡き母への後悔と、目の前のOさんに対する申し訳なさで、言葉が出てこなかったようです。

しばらくの沈黙の後、旦那さんは気まずそうに、けれどもしっかりと「知らなかった。今までごめん」と、Oさんに謝罪の言葉を口にしました。

それからというもの、旦那さんの態度は少しずつ変わり始め、食卓やレトルト食品を見て「手抜き」だと決めつけることはなくなったそうです。

おでんって実は出汁をとるところから始めると、意外と手間がかかる料理なんですよね。でも一番大切なのは、手間の数ではなく、家族を想う気持ち。旦那さんがそのことに気づいてくれて、本当によかったです。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。