皆さんは、なんだかこの子「図々しいな」と子どもに感じた経験はありますか。無邪気で可愛いと最初は思えたものも、時間の経過と共に感じ方に変化が出てくることもあるでしょう。今回は筆者の友人Y子が体験した、息子の友だちを通して、自分の言動を見つめ直したくなるエピソードをお届けします。

すると、受話器の向こうに出たのは、母親ではない、落ち着いた女性の声。「……あぁ、はい。M斗がお世話になってます。今夜は帰れないんですね。わかりました」
「お母様ですか」とY子が尋ねたことをきっかけにM斗の家の事情が分かってきました。

「実は、M斗の両親は彼が5歳の時に交通事故で亡くなりまして……今は私たち親戚と暮らしているんです。でも、家はちょっとあんまり本人がいたがらなくて、いつもお世話になってしまって、すみません」と女性から告げられました。淡々と、どこか疲弊したようにも聞こえる女性の言葉に、Y子は胸が締めつけられました。

思い返せば自立した振る舞い

その晩、M斗はごく普通に、楽しそうにK太と遊び、笑っていました。その様子を眺めながら、Y子はこれまでを思い返しました。

そういえば、宿題の効率のいい進め方をK太に教えてくれたのはM斗。お手伝いしてくれた時は、洗濯物の畳み方を丁寧に教えてくれ、「こうしたほうが早いよ」と生活の知恵を伝授してくれたのもM斗。

Y子がK太に伝える前に、M斗が先にたくさんのことを教えてくれていたから、時間を有効的に使えていたことに気がついたのです。それは、限られた環境の中で彼が一生懸命に身につけてきた、生きる力そのものでした。

夕飯のリクエストは、普段周囲を気遣って過ごしている彼が、ようやく見つけた「甘えられる場所」への信頼の裏返しだったのかもしれない。そう思った時、Y子は胸がぎゅっとなりながらも、これまでの違和感がスッと解けていくのを感じました。

小さな肩に宿る強さ

布団に入る直前、M斗がポツリとつぶやきました。「K太んち、なんか落ち着くんだよね」その言葉の重さを、Y子は静かに受け止めました。

これまで図々しいと思っていたM斗の行動は、彼なりの精一杯の親愛の情だったのかもしれません。小さな体で多くのことを経験し、健気に振る舞うM斗のリクエストを、Y子は「今度は何を作ろうか」と温かい気持ちで受け入れようと決意したのでした。

これまでの人との付き合い方や言動は、無意識に相手を傷つけるものではなかったか、自分自身を振り返り、生き方について考えさせられるエピソードでした。

【体験者:30代・主婦、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Miwa.S
事務員としてのキャリアを積みながら、ライター活動をスタート。持ち前の聞き上手を活かし、職場の同僚や友人などから、嫁姑・ママ友トラブルなどのリアルなエピソードを多数収集し、その声を中心にコラムを執筆。 新たなスキルを身につけ、読者に共感と気づきを届けたいという思いで、日々精力的に情報を発信している。栄養士の資格を活かして、食に関する記事を執筆することも。