夫が飲み会の日は、家を整えて迎える筆者。でも、私が飲み会の日は、帰宅すると山積みの食器と散らかったリビングが待っている……。そんな「当たり前」の差にモヤモヤしていた私が決行した、ある小さな実験。夫に家事の大変さを「自分事」として気づいてもらい、夫婦の間に本当の平和を取り戻すまでのエピソードです。

言葉で伝える代わりに、現状を「共有」してみた

「口で言っても伝わらないなら、一度同じ状況を体験してもらうしかない」
そう決意した私は、ある日、夫の飲み会の日に「実験」を決行。
いつもなら完璧にリセットする部屋を、あえてそのままにしてみたのです。

夕飯の食器もシンクに置いたまま。
取り込んだ洗濯物はソファに。
子どものおもちゃも散乱したまま。
罪悪感が少し胸をかすめましたが、「お互いの視点を知るために必要なことだ」と自分に言い聞かせ、私は子どもと一緒にさっさと寝室へ引き上げました。
深夜、夫が帰宅する物音がしましたが、私はそのまま眠りにつきました。

翌朝のリビングで突きつけた「現実」

翌朝。リビングには、昨夜の惨状がそのまま残っていました。
起きてきた夫は、散らかった部屋と昨晩のカレーの匂いが残るキッチンを見て、呆然としています。「え、これどうしたの? 何も片付いてないじゃん」
その言葉を待っていました、とばかりに私は返しました。
「いつも私が飲み会から帰った時、この景色を見てるんだよ」

夫はハッとした顔をしました。
「あなたが気持ちよく飲んで帰ってきて、すぐに寝られるのは、誰かが片付けているから。私は毎回、この片付けが待っていることを想像しながら飲んでたんだよ」
私の静かな訴えに、夫は何も言い返せず、しばらく沈黙した後、「……ごめん、全然気づかなかった」とバツが悪そうにつぶやきました。
悪気はなかった。でも、私の負担が彼の視界に入っていなかったことに気づいた瞬間でした。

完璧じゃなくてもいい、「気遣い」がある家へ

その日以来、劇的な変化が訪れました。
もちろん、夫がいきなり家事の達人になったわけではありません。
でも、私が飲み会から帰ると、少なくとも食器は洗われていて、リビングの床におもちゃが散乱していることはなくなりました。

「おかえり」
少し誇らしげな表情で起きて待っていた夫の顔に、私は心からの「ありがとう」を伝えます。
大切なのは、部屋がピカピカであることよりも、「相手が帰ってきた時にどう感じるか」という思いやりがあること。私の小さな実験は、我が家に「お互い様」の精神と、本当の意味での平和をもたらしてくれました。

【体験者:30代・筆者、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。