「だって、みんなやってるじゃん! 今やらないと、後でみんなに置いていかれちゃうよ!」その言葉を聞いて、私は驚きと焦りを感じました。息子が「置いていかれたくない」と切実な思いを口にしたのは、これまで見たことのない姿でした。
ゲームが息子にとっての「社会」だった
その瞬間、私は息子がゲームに対してどれほどの思いを抱いているのかを理解しました。ゲームはただの遊びだと思っていた私は、息子にとってゲームが友達とのつながりや話題を共有するための大切なコミュニティであることを認識しました。
「置いていかれる」という不安は、大人でいう仕事の情報交換やSNSの繋がりを断たれる感覚に近いのかもしれません。私がただ「ゲームばかりやりすぎだよ」と一方的に言っても、息子の孤独への不安には寄り添えていなかったことに気づいたのです。
一方的な制限ではなく、納得できるルール作りを
そこで私は、息子とじっくり話し合うことにしました。友達との時間を否定するのではなく、その大切な時間を守りつつ、どうやって生活のバランスを保つかという視点で話し合ったのです。
息子に、「友達とのゲームの時間は、大切な交流なんだね」とまずは共感を示しました。そのうえで「ゲームの時間を集中して楽しむためにも、宿題などのやるべきことを先に終わらせるルールにしよう。そして、たまには画面を消して、お母さんとゆっくり話したり、別の遊びをしたりする時間も作ってくれたら嬉しいな」と提案しました。
例えば、ゲームを終わらせた後には一緒にボードゲームをしたり、外で遊んだりして、ゲーム以外の楽しさも一緒に探していこうと約束したのです。最初はルールを守るのが難しい日もありましたが、対話を重ねるうちに、息子も納得感を持って取り組んでくれるようになりました。
自分でバランスを取れるようになった息子
「友達との時間」を認められたことで、息子は頑なに画面にかじりつく必要がなくなったようでした。その後、息子は自分なりにゲームと他の活動のバランスを取るようになりました。最初は反発していたものの、今では「今日は友達と約束があるから、先に宿題を済ませるね」「明日はゲームが休みの日だから、一緒に外で遊ぼう」と言って、自分でスケジュールを管理できるようになったのです。息子が自分でバランスを取れるようになったことを、親としてとても嬉しく感じました。
親として学んだこと
この経験を通じて、親として柔軟に接することの大切さを学びました。無理に制限するのではなく、対話を通じてお互いに理解し合い、共に解決策を見つけることが、息子にとっても最も効果的な方法だということを実感しました。ゲームに対する接し方が、親子の信頼関係を築くきっかけになり、今ではゲームに関することでお互いに意見を交換しながら、より良い関係を築いていると感じています。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:北田怜子
経理事務・営業事務・百貨店販売などを経て、現在はWEBライターとして活動中。出産をきっかけに「家事や育児と両立しながら、自宅でできる仕事を」と考え、ライターの道へ。自身の経験を活かしながら幅広く情報収集を行い、リアルで共感を呼ぶ記事執筆を心がけている。子育て・恋愛・美容を中心に、女性の毎日に寄り添う記事を多数執筆。複数のメディアや自身のSNSでも積極的に情報を発信している。