「お母さんの好きなもの」を忘れていた日々
その言葉を聞いた瞬間、私はハッとしました。
娘は、いつも私の心の奥底にある「親だから自分の希望は主張しない」という気持ちを見抜いていたのです。
たしかに、外食のお店選びはいつも子どもたちの好みが最優先。
そして「何が食べたい?」と聞かれても、「子どもが食べたいもので」と答えていて、外食で自分が何を食べたいのかすらわからなくなっていた私。
娘は、「家族でいること」と「夫婦二人の時間」の区別を、私よりずっと冷静に、そして一人の自立した視点で判断してくれていたのです。
娘がプレゼントしてくれた「私に戻る時間」
娘の提案が嬉しくて、私はその通りにすることにしました。
娘の夕食には、彼女が大好きなお店のお弁当を用意。戸締まりや連絡手段をしっかり確認し、私は、ずっと行きたかった近所の回らないお寿司屋さんを提案。夫と二人で出かけてきました。
静かにゆっくりと一品ずつの味を噛み締めて食事をするのは、本当に何年ぶりでしょうか。「親」という役割から少しだけ離れて、自分の「好き」に向き合う時間は、驚くほど心が軽くなるものでした。
帰宅後、娘に「ありがとう、すごく美味しかったよ」と伝えると、「今度は私たちも連れて行ってね」と娘は笑いました。
あの結婚記念日は、娘の予想外の優しさによって、子育てに埋もれ忘れかけていた「私の意思」を取り戻す、最高の機会となりました。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。