年末ぎりぎりの引っ越し作業を、私と弟が先走って始めたある日。
気づけば、ご近所の「島らしい大集合」が起きていました──その理由とは。
気づけば人が集まってきて
玄関先に荷物を出したり入れたりしていると、向かいの家のおばさんがふと足を止めました。
「引っ越し? 手伝うよ!」
驚いて「いや、大丈夫です」と返したのに、その声を合図にしたように人がどんどん増えていきます。
中には「一輪車持ってくるね!」と、自前の運搬道具を持って駆けつける人まで現れ、私と弟は思わず顔を見合わせました。
誰かが家電を持ち上げ、誰かが掃除を始め、誰かは荷ほどきを手伝ってくれて……。
当初の「自分たちだけで少しずつ」のつもりが、気づけば活気に満ちた作業場のようになっていました。
近所総出の引っ越しに発展
気づけば、私たちのささやかな作業は、完全に「ご近所総出の引っ越し」に変わっていて。
農繁期で忙しいはずなのに「若い子がおると進むね」「新しい家はええねぇ」と笑いながら動いてくれる姿に、胸の奥がぎゅっとなりました。
家族だけでは数日かかったはずの作業が、気づけば半日のうちにすべて片付いていたのです。
自分たちだけで抱え込もうとしていた私の中で、驚きと申し訳なさとありがたさが混ざり合い、気持ちのピークを迎えていました。
新居に広がった温かい時間
夕方には荷物がすべて収まり、新居はすっかり生活の場らしい空気に変わっていました。
家の中に響く笑い声を聞きながら、私の心にも静かな温かさが広がっていきます。
自分たちだけでは到底間に合わなかったスピードで始まった新しい暮らし。
「困ったときは誰かが力を貸してくれる」──その輪の中に自分が育ったことが、あらためて誇らしく思えたのです。
年末の慌ただしさの中で迎えた新居でのスタートは、島で生きる人たちのやさしさがぎゅっと詰まった一日になりました。
【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。