筆者がスーパーのレジで出会った“ちょっと怖そうな男性”。しかし、その人が見せた行動は思いがけない優しさでした。他人への気遣いが自然に広がっていく瞬間に触れ、先入観だけで判断できないと実感した出来事です。

意外すぎるひと言にハッとする

「すみません!」
順番が来た男性は、意を決したように店員さんに声をかけました。
「えーっと、どっちのレジに並んだらいいかな?」
店員さんが「お急ぎですか?」と尋ねると、男性は首を振り、「いや、ちょっとややこしい会計だから、他のお客さんに迷惑かけそうで……」と申し訳なさそうに答えたのです。

そして、私のほうを振り返り「僕、時間かかるので、よかったら他のレジにどうぞ」と丁寧に声をかけてくれました。
「えっ、なんて礼儀正しい方なんだろう」と心の中でびっくり。
私の後ろに並んでいた方達にも「すみませんねぇ」と申し訳なさそうに笑顔で声をかけていました。
その誠実な態度に、誰も文句を言う人はおらず、皆速やかに別のレジに移動しました。

思いやりのやり取りが作る“空気”

隣のレジに移動してからも、その男性の様子がつい気になってしまいました。
男性は店員さんと相談しながら、本当に細かく商品を袋分けしたり、会計をいくつかに分けたりしていて、確かに時間がかかっているようでした。

「ごめんねー、忙しいのにややこしいこと言って」と男性が言うと、店員さんはニッコリ笑って「大丈夫ですよ」と返します。
そのやり取りがとても爽やかで、レジ周りの空気がふわっと柔らかくなるのを感じました。
ほんの少しの思いやりで、こんなにも雰囲気が変わるものなんだなと、傍で見ている私まで温かい気持ちになりました。

見た目では測れない“本当の優しさ”

勝手な思い込みで「怖そう」「文句を言いそう」と決めつけていた自分が、少し恥ずかしくなりました。
実際の男性は、まわりに迷惑をかけないよう気を配り、店員さんにも丁寧に接する思慮深い人でした。
その優しさは、まわりにも穏やかな空気として広がっていき、文句を言う人も嫌な顔をする人もいません。
思いやりは目に見えなくても確かに届くもの。だからこそ、先入観だけで人を判断してはいけないとあらためて感じた出来事でした。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒヤリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:大下ユウ
歯科衛生士として長年活躍後、一般事務、そして子育てを経て再び歯科衛生士に復帰。その後、自身の経験を活かし、対人関係の仕事とは真逆の在宅ワークであるWebライターに挑戦。現在は、歯科・医療関係、占い、子育て、料理といった幅広いジャンルで、自身の経験や家族・友人へのヒアリングを通して、読者の心に響く記事を執筆中。