友人Aの話です。
ある日、お嫁さんから「だしの取り方を教えてほしい」と連絡がありました。
息子が「母のだしはおいしいから習ってきたら?」と言ったそうで──思わぬ「料理教室」が開かれた日のことです。

息子にひとこと言いたくなって

その夜、Aは息子に電話をしました。
「うちの味をそんなに語るなら、自分でも作ってみなさいよ!」
冗談めかして言うと、息子は「え、だって母さんのが一番うまいんだもん」と照れ笑い。
Aは思わず吹き出しながらも「母の味」という言葉が少しだけうれしく感じられました。

味を通してつながる家族

後日、お嫁さんから「だしのおかげで料理が楽しくなりました」とメッセージが届きました。
わざわざ習いに来てくれたその気持ちが、Aには何よりもうれしかったそうです。

自分の家庭の味が、息子夫婦の暮らしの中にも少しずつ混ざっていく。
そう思うと、胸の奥がじんわりと温かくなりました。
味を受け継ぐというのは、レシピを伝えることだけではないのかもしれません。

心を込めて作る時間や、誰かを思う気持ちまで伝わっていく──そんな日常が、なんともほほえましく感じられた出来事でした。

【体験者:50代・女性主婦、回答時期:2025年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。