筆者の知人A子は、長い間飲食店に勤めていましたが、「他に自分にあった仕事があるのかもしれない」と思うようになっていました。そんな矢先に、A子のモヤモヤした気持ちを晴らしてくれる出来事があったそうです。一体何があったのでしょうか。
接客一筋「アルバイトから正社員へ抜てき」
私が勤めているレストランは、国内外の観光客が訪れるにぎやかな場所にあります。
高校生のころにアルバイトとして雇われたのがきっかけでした。
当時から社員さんは優しい人ばかりで、職場はとても居心地が良かったのです。人と接することが好きな私は、積極的にホールを任せてもらえるようになりました。
「卒業しても働きたいな」と、自然とそう考えるようになったころ。
店長や他のスタッフから「A子ちゃんが、社員になってくれたら嬉しいな」とありがたい声をかけてもらいました。
その言葉にも後押しされ、高校卒業後そのまま正社員として働くことを決めたのです。
このままでいいのだろうか。揺れる思い
あれから数年が経過。大好きな仕事。毎日の忙しさにやりがいを感じる一方で、高卒で他の仕事は一切経験がないという事実に焦りを感じ始めました。
「私、このままでいいのかな」「もしかしたら、他にもっと自分に向いた仕事があるんじゃないか」そんな風に、心が揺れる日が出てきたのです。
外国人観光客の落とし物
そんなある週末、アジア系外国人数名の団体客が来店。彼らは終始楽しそうに会話をし、ひと通り食事を終えると店をあとにしました。
私は彼らが食事をしたテーブルの食器を片付けに入ります。すると、食器と共にお客さんが忘れていったスマホを発見。
「追いかけたらまだ間に合うかもしれない!」
スタッフにひと言伝えて即座に店を飛び出しました。お客さんは、ちょうどバスに乗り込む最中。息を切らしながらスマホを見せ「忘れ物ではないですか?」と尋ねると「ありがとう!」と何度も感謝の言葉をかけてくれたのです。
「また来たい」とも言われ、私は心の底から嬉しくなりました。
やっぱりこの仕事が好きだ
そのお客さんによると、国や地域に差はあるものの、スマホや財布を落として手元に戻ってくることは珍しいのだとか。
私としては当たり前のことをしたつもりでしたが、「そんなに喜んでもらえるなんて」と、心が満たされた気持ちになったのです。
また、海外の方に日本の良さを知ってもらったような気がして、改めて「私はこの仕事が好きだ」と再認識しました。
仕事への迷いがまったく消えたわけではありません。それでも「まだこの場所で頑張ってみよう」と強く思わせてくれた出来事でした。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。