筆者の重度知的障害を伴う自閉症の長男が学校を休んだ日に突然、失踪した話です。警察犬の捜索も打ち切られ絶望的な状況で寿命が縮む思いでしたが、自宅から10km以上離れた駅の待合室で無事発見されました。この経験は、わが子を守るための備えと、障害を持つ親の心構えについて、私に決定的な教訓を与えました。

悪い想像ばかりが頭をよぎります。
まずは警察犬に長男の匂いを追ってもらうことになりました。

1時間後、悪天候の中、懸命に捜索してくださった警察官と警察犬でしたが、「風が強くて犬が匂いを追えないので捜索を打ち切ります」と報告されてその時は絶望しました。

長男は今、生きているのだろうか……。

学校やデイサービスの職員の方が総出で探してくれています。

私と次男は自宅待機を警察から指示されていました。
動き回っても無駄とわかっていても、じっと自宅にいることは何よりも苦しかったです。

「寿命が縮む思い」とはまさにこのことだと思います。

時間の感覚がわからず、ふと見ると外の景色は薄暗くなっていました。

奇跡の発見

学校から電話がありました。

ふと時計を確認すると15時半。

「駅の待合室に長男らしい人物がいます」

体調不良も高熱も既に吹き飛んでいました。

急いで次男を連れて車で学校へ向かうと、校長室で首にタオルを巻いた長男の姿がありました。

「H駅の待合室にずっといたようです」

「H駅? 自宅から10km以上離れていますよね?」

「たぶん、自力で歩いて行ったんでしょうね」

長男は言葉が片言なので真相はわかりません。

しかし無事で生きていてくれて本当に良かったです。
その安堵感で胸がいっぱいになりました。この経験は、わが子の命を守る備えの甘さを痛感させました。

帰宅後、すぐにGPSを購入したのは言うまでもありません。
それと同時に、私は二度とこのような事態を招かないよう、家の施錠の徹底や、長男の特性と緊急連絡先を記載した「見守りカード」の常時携帯、そして何よりもどんな時も長男から目を離さないという覚悟を新たにしました。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。