筆者の重度知的障害を伴う自閉症の長男が学校を休んだ日に突然、失踪した話です。警察犬の捜索も打ち切られ絶望的な状況で寿命が縮む思いでしたが、自宅から10km以上離れた駅の待合室で無事発見されました。この経験は、わが子を守るための備えと、障害を持つ親の心構えについて、私に決定的な教訓を与えました。

長男の発熱

私には重度知的障害を伴う自閉症の長男と、次男がいます。長男は当時、養護学校高等部3年でした。

その日、学校から「微熱があります」と連絡がありました。

私と次男も高熱を出して寝込んでおり、片道30分の道のりを運転して迎えに行くことは厳しい状況です。

他の手段が無く苦渋の決断でしたが、運賃が高額になることを覚悟し、タクシーで帰宅させることにしました。

まだ当時はコロナ禍でタクシー内も密室扱いなので、長男が一人でタクシーに乗り、担任が自分の車で長男の乗ったタクシーに追従、自宅前到着時に私のスマホに連絡してもらうことになりました。担任の先生が細心の注意を払い、無事に送り届けてくれたことに心から感謝しています。

帰宅した長男は嘘のように元気で、熱も平熱です。

しかし、担任から「明日は念のため休んで下さい」と言われました。

元気な長男

翌朝、長男はすっかり元気です。

大好きな通学バスに乗りたくて、いそいそと登校の準備をしていますが、何とか説得して休ませました。

私と次男はまだ熱が下がらず、布団の中でゴロゴロしています。

今思えば、体調不良で判断力が鈍っていたこともあり、「やけに静かだな……」と思ってふと見ると長男がいないのです。

部屋中探しても見つからず、慌てて次男を自転車に乗せてバス停へ向かいましたが、そこにもいませんでした。障害を持つ長男の行動を予測し、安全対策を徹底できていなかった、親としての私の不注意が招いた事態です。

パニックで頭が回らない中、必死で状況を整理し、まずは学校に連絡、次は警察へ連絡しました。
自宅に戻るのももどかしく、そのまま次男を乗せて自転車で交番に向かいます。

捜索と絶望

「一度、自宅に戻ってください。すぐにそちらに向かいます」

交番の警察官に言われて自宅に戻り、待つこと数十分後、3人の警察官が来ました。

状況を説明すると「一定時間見つからなければ行方不明届を出してもらいます」と告げられました。