旅行系のカスタマーセンターで働いていた頃のこと。
隣で新人さんの対応を見守るのは、思った以上に神経を使う仕事でした。
そんなある日、ホテル名の「読み間違い」が引き起こした小さなハプニングに、職場が少しだけ優しくなった瞬間がありました。
起きてしまった「読み間違い」
その日も、私は別のお客様対応をしながら新人さんの様子を見ていました。
すると隣から「はい、『まくのうち』のホテルですね」と聞こえてきて、思わず手が止まりました。
「東京駅に近いですし、便利だと思います」と続く声。
まさかの「幕ノ内」!?
指摘しなきゃと思うのに、こみ上げてくる面白さが勝ってしまう。
私は慌ててマイクをミュートにして、笑いをこらえるのに必死でした。
笑いの中にある「優しさ」
ホテル名にも「丸の内」が入っていたので電話を終了するまで何度も連呼される「幕ノ内」
そのうちに異変に気付いた周りのオペレーターたちも肩を震わせていました。
電話を終えたあと、上司が新人さんに声をかけました。
「『幕ノ内』はお弁当ね。ホテルは『丸の内』だよ」
その言い方がまた優しくて、職場の空気がふっと和みました。
誰かの失敗を責めるのではなく、笑いに変えて教えるその姿に「教育ってこういうことかもしれないな」と感じた瞬間でした。
小さなハプニングがつくる「あたたかさ」
新人教育は、気を張ることの連続です。
けれど、こうした「ちょっとした出来事」があるからこそ、現場はあたたかく、人のぬくもりがある場所になる。
今日もどこかで、新人さんがひとつ覚えて、現場の空気が少しだけ優しくなっているのかもしれません。
そんな光景を思い浮かべると、なんだか胸があたたかくなりました。
【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。