軽いお願いのはずが……
数年前、会社がリモートワークを推進し始めてから、私はほとんど在宅勤務をしています。
ある日、出社勤務の多い同僚が、軽い調子で言いました。
「私、今週忙しくて宅配便も受け取れなくて。A子ちゃん、家にいるなら荷物受け取っといてくれない? 送り先をA子ちゃんの家にしておくから、出社日に持ってきてくれたら助かる!」
最初は、ちょっとした頼まれごとだと思って快く引き受けました。
優しさが仇に
ところが、同僚の頼みはその1回では終わりませんでした。
それ以来、彼女は頻繁に私の家に荷物を送りつけるようになったのです。
しかも、届く荷物のほとんどは、どう見ても仕事用ではありません。
ネット通販のロゴが入った箱が次々と届くたび、私の家はいつの間にか“同僚の宅配拠点”のようになっていきました。
在宅勤務中にわざわざ宅配業者に対応しないといけないのも、地味に大変です。
仕事に集中したいのに、何度もインターホンが鳴ると気が散ってしまいます。
たまらず私は、きっぱりと伝えました。
「ごめんね、もう受け取れない。これは仕事じゃないし、私の家を使うのは困るよ」
「もし設置できるなら宅配ボックスとかを使ってみたら?」
しかし彼女は悪びれる様子もなく、「え〜ちょっとくらいいいじゃん」「置いといてくれるだけで助かるのに」と軽く返すばかり……。
我慢の限界
そしてある朝、また見覚えのある名前の荷物が届きました。
しかし、私は玄関先で宅配業者にはっきりと「この荷物は受け取りません」と伝え、受け取りを拒否しました。
数時間後、彼女から慌てたメッセージが。
「あの荷物、今日必要だったのに!」
どうやら出張に使う資料が入っていたようです。
でも、私は毅然と返信しました。
「私の荷物じゃないから受け取れないよ」
リモートでも働いている
少し気の毒だったけれど、その瞬間ようやく彼女にも伝わった気がしました。“家にいる=便利な倉庫”ではない、と。
働き方が多様になった今だからこそ、「相手の立場を想像する」ことを忘れずにいたいものですよね。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。