「応援したい」その気持ちが、思いもよらぬ誤解をうむことになるとは! これは、筆者が体験した、友人M子のエステサロンで起きた“信頼”をめぐるエピソードです。

M子のエステサロン

学生時代の友人M子が、念願のエステサロンをオープンさせました。そこで、お祝いもかねて施術を受けることにしたのです。

M子のハンドマッサージは驚くほど温かく、指先から疲れがほどけていくようでした。お店の雰囲気も心地よく、料金も良心的で大満足。何より、長年の夢を形にした彼女の姿に、胸が熱くなるほど感動したのを覚えています。

おススメのサロン、自信をもって紹介するが……

肌の調子が悪くなると、私はM子のもとへ通うようになりました。

そんなある日のこと。施術の合間、彼女が悩ましげに口を開きました。「最近、新人を雇ったんだけど、なかなかお客さんが増えなくて……」

その表情に少し疲れが見えて、胸がきゅっとしました。応援したい一心で、私は学生時代の友人U子に「とてもいいお店だよ」と紹介したのです。

M子の丁寧な施術と癒しの空間なら、彼女を知らない人でもきっと満足してくれる。——そう信じていました。

U子の反応にドキリ……!

ところが数日後、U子から意外なLINEがきたのです。

「ねぇ、あのサロン、かなり強引にコース契約させようとするね」

その言葉に思わず息をのみました。M子はこれまで、一度も私に勧誘の話をしたことがなかったからです。混乱したまま、私は思わずM子に連絡を入れました。

「どういうこと?」と尋ねると、 返ってきたのは「ごめんね、そんなに強引だった?」という短い返信。

その言葉を見つめながら、胸の奥で“信頼”がかすかに揺れる音がしました。

真実と彼女の誠実さ

それから数ヶ月後、サロンの前を通りかかると「しばらくお休みします」と書かれた張り紙。 ホームページには「謝罪」と「返金」という文字が並び、思わず目を疑いました。

すぐにM子に連絡を入れると、即座に返信が届きました。
「無理な勧誘をしてしまったのは、新しく入ったスタッフなの。本当にごめんね」

彼女は、対象のお客さん全員に謝罪と返金をしていたそうです。失った信頼を取り戻すため、接客研修を受けなおし「通いたくなるお店づくり」を学んでいるとのことでした。

口コミ対応にも丁寧に向き合い、少しずつ信頼を回復していると聞き、こみあげるものがありました。

誤解してしまったことを思うと胸が痛みます。けれど、諦めず努力を続けるM子を、これからも応援していきたいと心から思いました。

時間はかかるかもしれません。それでも、きっと彼女のもとには再び人が集まってくるはずです。

信頼は一度壊れることもある。けれど、誠実さがあれば、何度でも築きなおせる——。彼女の姿が、そのことを改めて教えてくれたできごとでした。

【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。