夢を叶えてホストファミリーに
Kさんは40代から英語の勉強を始めました。
きっかけは、かつて自分の子どもをアメリカに留学させたとき、温かく迎えてくれたホストファミリーへの憧れでした。「いつか自分も誰かを迎える立場になりたい」と、毎朝ラジオ講座を聞きながらコツコツ勉強を重ねたのです。
数年後、夢が叶い、アメリカ人の16歳の男の子を受け入れることになりました。
少年の一言にドキッ
ある日、夕食後に少年が突然Kさんに尋ねました。
「Kさんは、なぜ家事をしないの? この家はどうしてお母さんだけが働いているの?」
思いがけない質問に、Kさんはドキッとしました。
実際、Kさんは仕事が忙しいことを理由に、家事をほとんど妻に任せきりにしていたのです。一瞬、返す言葉に詰まりました。
そのとき、少年は真っすぐな目で言いました。
「うちの両親は、家事も育児も2人で分担しているよ。奥さんがかわいそうだよ。」
異文化が教えてくれた“家庭のチームワーク”
高校生の少年にそんなふうに指摘されるとは思ってもみなかったKさん。
驚きと同時に、どこか胸の奥がチクリと痛みました。
家事を「手伝う」ではなく「分担する」のが当たり前という彼の考え方に、強い衝撃を受けたのです。
それは単なる文化の違いではなく、家庭というチームのあり方そのものを問われたように感じました。
それ以来、Kさんは少しずつ家事を意識的に手伝うようになりました。
気づきをくれた“16歳の先生”
数か月後、少年が帰国する日。
Kさんは「君に言われた言葉、忘れないようにするね」と伝えました。
少年は笑顔で「チームワーク、大事だよ!」と返してくれたそうです。
ホストファミリーとして受け入れたつもりが、教えられたのは自分のほうだった……。
異文化交流で深い学びを得たKさんでした。
【体験者:70代・男性会社員、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒヤリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大下ユウ
歯科衛生士として長年活躍後、一般事務、そして子育てを経て再び歯科衛生士に復帰。その後、自身の経験を活かし、対人関係の仕事とは真逆の在宅ワークであるWebライターに挑戦。現在は、歯科・医療関係、占い、子育て、料理といった幅広いジャンルで、自身の経験や家族・友人へのヒアリングを通して、読者の心に響く記事を