多様性の今、「自分らしさ」が重視され、学校の校則も各企業における服装コードも以前よりも緩くなっています。「自分らしく」いることは大切ではあるものの、自分らしさばかり重視していれば、安全性に関わる問題に発展する可能性もあります。
今回は、筆者の友人がカフェの店長として悩まされたおしゃれ大好きな女子大生とのトラブルを紹介します。

面接中に違和感を抱いたものの、語学力の高さに惹かれて採用したが……

私の友人A子は東京のおしゃれエリアでカフェの店長を務めています。近年は、外国人観光客も増え、海外からのお客さんが増えています。A子は語学に自信がなく、かつ従業員も外国語対応が苦手な人が多いため、接客には苦戦中……。

そうした中、語学堪能な女子大生B子が面接に訪れました。面接でも自己主張の強さを感じた他、ルールの理解について、他の応募者よりも説明に時間を要したものの、人手不足であることに加えて、語学に長けており、性格も明るく、外国人観光客の対応を安心して任せられると思い採用しました。しかし、採用してすぐ、自分の選択が甘かったことに気付きました。

A子のカフェはファッショナブルな雰囲気をウリにしていることから、従業員は勤務時間中もおしゃれを他の飲食店よりは楽しめます。とはいえ、食べものを扱うことから爪や髪に関してはルールを明確に定めています。例えば、爪は短め、ネイルは禁止、髪についてはカラーは自由だが、肩より長い人はしっかり結ぶなど。

B子は面接に煌びやかなネイルで来たものの、面接時に確認すると「ネイルを落とす」と言ってくれました。しかし、初日は面接時とさほど変わらないネイルで出勤。マニキュアだったため、職場にストックしてある除光液で落としてもらい、シフトに入ってもらいました。

しかし、B子の自由気ままな振る舞いはまだまだ続きます。マニキュアを付けてシフトに入り、注意を受けない限り、自分から落とすことはありません。注意を受けたら、ネイルを休憩室で落としてくれますが、狭い休憩スペースで毎回のように除光液を使っていれば、食事をしている従業員にも迷惑です。

加えて、美容院で縮毛矯正をしたという理由で、ロングヘアをまとめてくれないこともありました。B子によると「美容師さんに〇日は髪はしばらない方がいいと言われました」とのことですが、それならばシフトを調整すべきです。

飲食店特有のルールを説明しても理解してくれないもどかしさ

B子に飲食店の事情や店の方針を丁寧に説明しても、「海外では〇〇だ」「でも、友人の働いている店では〇〇ですよ」「髪の毛しばりなさいっていうルールはそもそも……」などと反抗を繰り返すばかり。また、少しきついことを言えば、「パワハラだ」などと言われることも懸念されました。

雇った人を解雇するのも難しく悩んでいたところ、B子は長く働くパートさんからネイルについて注意を受け、怒りを爆発させ、その場で退職を宣言。B子は「こんな店、辞めます」と声を張り上げ、出て行きました。

心優しいA子はB子のことを内心心配しています。学生のうちにバイトで失敗を重ね、そこから学び、大学卒業後は企業に馴染んで欲しいというのがA子の胸中です。また、語学ができるのに、周囲とトラブルを起こしてばかりいてはもったいないとも思っています。

今回の経験から、A子は「ルール順守」に関する意識の重要性を再認識しました。職業によっては従業員の安全性確保のためにも、多様性の時代であっても服装のルールを定め続けなければなりません。

A子は今後、採用面接時において、語学力などのスキルだけでなく、飲食店の衛生管理に関するルールを具体例(ネイル、髪型など)を挙げて丁寧に説明し、その場できちんと同意を得るなど、初期段階での認識合わせを徹底することを決意しました。

【体験者:30代・会社員女性、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞な
どに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:太田あやこ
大学でジェンダーや女性史を学んだことをきっかけに、専業ライターとして活動中。自身の経験を活かしながら、幅広い情報収集を行い、読者に寄り添うスタイルを貫いている。人生の選択肢を広げるヒントを提供し、日々の悩みに少しでも明るさをもたらせるよう、前向きになれる記事づくりに取り組んでいる。