それは満月の夜。一本の電話から
「まさかのタイミングでごめん……陣痛きたかも」
スマホの画面に浮かぶメッセージ。送り主は、臨月を迎えていたママ友A子です。
時計を見ると、夜の8時過ぎ。外は静かで、カーテンの隙間から満月がのぞいていました。この日、旦那さんはどうしても外せない会食だったそう。臨月だったこともあり、万が一のことがあったときには連絡してもいい? と言われていた日でした。でも、まさか本当にこのタイミングでくるなんて。
まさかのタイミングに大慌て!
一気にアドレナリンが上がりました。寝かせようとしていた自分の子たちにも事情を説明。私は「すぐ行くね!」と返信し、慌てて着替えて玄関へ。外に出ると、月の光がやけに明るかったのを覚えています。夜風が妙に冷たくて、気持ちが落ち着かずそわそわしました。
テキパキ! ママ友連携プレー
もう一人、いつも一緒に遊んでいるママ友B美からも「いける? うち、準備できた!」の連絡。二人で息を合わせて、A子の家へ。息を切らしながらも、「満月って本当に関係あるのかな……」なんて考えていました。後で調べたところ、満月と陣痛の関係に科学的な根拠はないと分かったものの、その時は焦っていて、まるで深夜のミッション。
タクシーに乗せ、ほっと一息
おうちにつくと、A子がリビングで深呼吸していました。顔色は真っ赤ですが、意外と冷静。「マンションの下にタクシー呼んであるから……上の子たち、お願い!」
「任せて! 大丈夫、大丈夫!」B美が下まで付き添ってタクシーの到着を確認。私は泣きそうな顔をした上の子たちに「大丈夫だよ、ママすぐ戻るからね」と声を掛けました。ほんの数分の出来事なのに、時間がスローモーションのようでした。
月の光に照らされた“助け合い”の輪
タクシーが見えた瞬間、少しほっとした表情をしたA子。「ありがとう!」と手を振りながら乗り込むのを見送りました。
一旦マンションに戻ってきたB美と私は顔を見合わせ、ミッション達成をかみしめました。
私たちの歓喜の笑い声が夜道に溶けていきます。上の子たちは我が家でそのままお泊まり。子どもたちは思いがけない“夜のパジャマパーティー”を楽しんでいました。
誰かの「困ったとき」にすぐ動ける関係って、実はすごいこと。
夜の月を見上げるたびに思い出します。大人になってからも、こんな風に助け合える人たちに出会える“ママ友ネットワーク”の力って、あなどれない。
【体験者:30代・筆者、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。