同じ階に住む夫婦
私は夫との2人暮らしです。
私たちはアパートに住んでいるのですが、数部屋挟んだ部屋にも、夫婦で暮らしている人達がいました。
そこの奥さんは明るくいい人なのですが、少し困ったところがありました。それがゴミ捨てのルールを守らないこと。
ゴミの日以外にもゴミを出したり、分別せず出したりと、少々目に余るものがありました。
外から聞こえてきた声
ある日の朝のこと。仕事に出かける支度をしていた私の耳に、外から言い争っているような声が聞こえてきました。
我が家の窓からはちょうどゴミ収集所が見えるのですが、声はそちらの方から聞こえてくるようです。
窓から見てみると、ゴミ収集車と作業員の男性の姿が見えました。
そして、あの奥さんの姿も。
奥さんは、「いいじゃない! けちけちしないで持って行きなさいよ!」と怒鳴っています。作業員は、「ルールに従って分別していないものは受け取れません!」と強めの口調で言い返していました。
奥さんが持つゴミ袋に目をやると、燃えるゴミ袋にも関わらず空き缶がぎっしり入っていました。
作業員は、「あなただったんですね、いつも燃えるゴミの日に空き缶を出していたのは……」とあきれ顔。
「いいから持って行ってよ! ゴミはゴミでしょ!」となおも食い下がる奥さんに、作業員は「いえ、このゴミは回収できません!」とキッパリと言い放ちました。
毅然とした態度を続ける作業員に、奥さんは諦めたのかゴミを持ったままアパートの方へ帰ってきました。
ゴミの行方
奥さんは「もうちょっと早く持っていけばよかった。ゴミ収集車が来る前に置いていれば捨てられたのに!」と悔しそうに独り言を言っていました。
その姿を見て、私は少しため息が出てしまいました。
奥さんは、ルールに反したゴミも回収していると思っているのでしょう。
ですが、実は違います。
奥さんが出した分別されていないゴミは、回収されず置かれたまま。それを町内の衛生係の方が引き取り、空き缶の収集日が来るまでご自宅で保管。袋も適切なものに変え、改めて出し直してくれているのです。
ルール違反の行動が、知らず知らずのうちに多くの人に大きな負担をかけている。
「たかがゴミ出し」ではなく、「されどゴミ出し」。地域で生活する一員として、小さなルールを大切に守り続けることこそが、最も大きな貢献になると、心に誓いました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Junko.A
子育てに奮闘しながら、フリーランスのライターとして活躍中。地方移住や結婚、スナックの仕事、そして3人の子育てと、さまざまな経験を通じて得た知見をライティングに活かしている。文章を書くことがもともと好きで、3人目の子どもを出産後に、ライターの仕事をスタート。自身の体験談や家族、ママ友からのエピソードを元に、姑に関するテーマを得意としている。また、フリーランスを目指す方へ向けた情報ブログを運営中。