孫の好き嫌いを克服するために、筆者の友人M美さんが考えたのは「食べさせる」より「一緒につくる」台所育児でした。台所でのさりげない工夫が、やがて家族の食卓に笑顔を運んだ、心温まるエピソードです。

孫の好き嫌い

私は、娘からよく相談を受けていました。
「野菜を全然食べないの。どうすれば食べるようになるかな」
「叱って食べさせるのも嫌だし、できれば今のうちに食べられるようになってほしい」
娘の悩みを聞きながら、ある“作戦”を思いついたのです。

さりげなく巻き込むお手伝い作戦

ある日、娘の家に遊びに行ったときのこと、お昼ご飯を作ろうと台所へ。
そして孫に向かって、「ちょっとお手伝いしてくれない?」と声をかけました。
「いいよー!」と元気に駆け寄る孫。

最初の役目は“味見係”。
野菜スープの味見をお願いしましたが、嫌いな野菜のことには一切触れません。
「うーん、少し薄いね」「お塩をちょっと足してみようか」
そんな会話を重ねながら、自然と孫の表情も楽しげに。
その後もサラダや炒め物など、次々に料理へと巻き込んでいきました。

家族の笑顔が生まれた食卓

「〇〇くん(孫)が味見してくれたスープ、おいしいよ」
その言葉に家族全員が目を丸くし、「どれどれ」とスプーンを手に取りました。
「ほんとだ! おいしい!」と笑顔が広がる中、孫も得意げに口をつけます。
自分が関わった料理だからこそ、自然に手が伸びたのでしょう。
嫌いだったはずの野菜スープを、ぺろりと食べてしまったのです。

押しつけず、関心を育てる知恵

その日以来、孫は台所に立つのが好きになりました。
「自分で作ると、野菜もおいしくなるんだね」と笑う孫の声に、ほっと一安心。

無理やり食べさせるよりも、関わりながら興味を育てることが一番の近道。
“おばあちゃんの知恵”には、子どもの心を動かす温かい力があるようです。

【体験者:50代・女性会社員、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒヤリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:大下ユウ
歯科衛生士として長年活躍後、一般事務、そして子育てを経て再び歯科衛生士に復帰。その後、自身の経験を活かし、対人関係の仕事とは真逆の在宅ワークであるWebライターに挑戦。現在は、歯科・医療関係、占い、子育て、料理といった幅広いジャンルで、自身の経験や家族・友人へのヒアリングを通して、読者の心に響く記事を執筆中。