幼稚園のいちご狩り遠足、息子との思い出
幼稚園のいちご狩り遠足を、親子で指折り数えて楽しみにしていました。初めての体験に胸を躍らせ、前日には当日のお弁当の用意もリュックも準備万端。息子も「早くいちごを摘みに行きたい!」とワクワクしながら、朝を待ちわびていました。
しかし、当日の朝、息子が突然嘔吐と発熱を起こし、診断は胃腸炎でした。急に訪れた事態に驚きと焦りが押し寄せ、心の中では「少しでも大丈夫なら……」と考えてしまいましたが、冷静になり、無理せずに欠席を決めました。その判断が正しいとわかっていても、息子の涙を見るとどうしても「楽しみにさせすぎたのでは?」と自問し、自分の判断に悩みました。
代わりの楽しみを提案する大切さ
数日後、元気を取り戻した息子は登園したものの、クラスの子どもたちは遠足の話で盛り上がっていました。息子の顔が少し曇り、「僕も行きたかった」とぽつりと呟いたその瞬間、私は気づきました。「行けなかったこと」を無理に明るく話して上書きするのではなく、まずは息子の悲しい気持ちをしっかり受け止め、共感することが大切だと。
そこで、私は息子を抱きしめながら「行けなくて悲しかったね」とその気持ちを認め、次に「元気になったら、お友だち家族と同じ農園に行ってみようか?」と提案しました。
早速、園の遠足と同じ体験ができるように、日程や持ち物を調整し、できるだけ同じような内容に近づけるよう工夫しました。また、息子の体調を考慮して、休憩や水分補給をこまめにし、着替えも多めに準備しました。
代替案で心を回復
そして迎えた当日、息子は「みんなと同じ遠足だ!」と目を輝かせ、楽しさを満喫しました。帰宅後も何度も「楽しかったね!」と振り返り、その表情に私は心から安堵しました。
今回の経験を通じて、私はひとつの大切なことを学びました。子どもは「行けなかった事実」よりも、「気持ちをわかってもらえたこと」と「やり直せた体験」で心が回復するということです。親としては、焦りやプレッシャーに流されず、まずは健康を最優先に考え、その後に代替案を提示することが大切だと感じました。
親として学び、成長する
また、私が気づいたのは、完璧に同じ体験を再現する必要はないということです。似たような体験を子どものペースで用意するだけでも十分に心は満たされます。さらに、友だち家族と一緒に計画を立て、体験を共有することで、親子ともに満足感を得ることができると実感しました。
今回の遠足を通じて、失敗や予期せぬ出来事があっても、それをどう乗り越えていくかで親子が成長できるチャンスが生まれることを深く感じました。子どもたちの成長には「正解」はなく、それぞれのペースで自然に歩んでいくことが大切だと、改めて実感した瞬間でした。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:北田怜子
経理事務・営業事務・百貨店販売などを経て、現在はWEBライターとして活動中。出産をきっかけに「家事や育児と両立しながら、自宅でできる仕事を」と考え、ライターの道へ。自身の経験を活かしながら幅広く情報収集を行い、リアルで共感を呼ぶ記事執筆を心がけている。子育て・恋愛・美容を中心に、女性の毎日に寄り添う記事を多数執筆。複数のメディアや自身のSNSでも積極的に情報を発信している。