昔は、旅行の予定をびっしり詰め込むタイプでした。
限られた日数で、できるだけ多くの景色を見たいと思っていたのです。
けれど最近は「ここで少し休もう」「この景色をもう少し眺めたい」と思うように。
「効率よく回る」よりも「心が動く瞬間を味わう」旅に変わってきたのです。
詰め込み旅行が好きだった頃
若い頃の私は、旅行の計画を立てるのが何よりの楽しみでした。
パンフレットを見比べて、朝から晩まで観光地をはしごするスケジュールを組む。
「せっかく来たんだから、できるだけ多く行きたい」と、地図の上でルートを練る時間もワクワクしていたのです。
疲れを感じても「あと一か所だけ」と欲張ってしまう。
そんな「全力旅」が当たり前でした。
変化のきっかけ
ところが、ある旅でふと気づいたのです。
午前中から動き回って、夕方にはもう足が鉛のように重くなっている。
「このあと観光地に寄る予定だったけど、もう無理かも」とホテルに戻った瞬間、なぜだかほっとしている自分がいました。
「あれもこれも」を追いかけるより、ただのんびり休む時間に心が安らぐ。
そんな気づきが、静かに胸に残りました。
「余白」を入れる旅の心地よさ
それ以来、旅の計画には必ず「休む時間」を入れるようにしました。
カフェでゆっくりとお茶を飲んだり、ぼーっと風景を眺めながら1時間くらいベンチに座っていることもあります。
道行く人を眺めながら「その場所」でゆっくりと時間を過ごす幸福を感じる。
以前なら「時間の無駄」に思っていたことが、今では旅のいちばん贅沢な瞬間になりました。
思い返せば、仕事も家事も「予定をこなすこと」ばかりに意識が向いていた気がします。
足を止めることで、ようやく「今ここにいる自分」を感じられるようになったのです。
年齢を重ねるということ
昔のように一日に何か所も回ることはできません。
けれど、できないことを数えるより、自分に合ったペースを見つけるほうがずっと気持ちが楽になりました。
ゆっくり過ごした時間ほど、鮮やかに思い出せるものだと気づいたのかもしれません。
「たくさん行きたい」から「ひとつを深く見たい」へ。
年齢を重ねるというのは、頑張り方を少しずつ変えていくことでもあるのだと感じています。
【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。