終わらない片付けバトル
小学2年生の娘の部屋は、それはもう、ひどいものでした。
床には脱ぎっぱなしの洋服が散らばり、机の上は読みかけの本や漫画で山積み。
優しく「一緒にお片付けしようか」と誘っても、「後でやるから」と聞く耳を持ちません。
かといって、きつく叱ると、ふてくされて反抗的な態度を取るばかり。
仕方なく、娘が学校に行っているあいだに私が片付けるのですが、「これが本当に娘のためになっているのだろうか……」と悩む日々でした。
突然の「お家に行きたい!」発言
そんなある日のことです。
私は娘を連れて、親しいママ友親子と一緒に公園で遊んでいました。
すると、しばらく遊んだあと、ママ友の子どもが突然、「ねぇ、これから〇〇ちゃん(娘の名前)のお家に行きたいな!」と言ったのです。
その瞬間、娘の顔からサーッと血の気が引くのが分かりました。
散らかり放題の自室が頭に浮かんだのでしょう。
私は娘が慌てているのを横目に、内心ニヤリとしながら「もちろんいいよ! じゃあ今からママと一緒に家に来て、おやつを食べようよ!」と、にこやかに答えました。
母の秘策とは
娘は「えっ、でも……」と、困った顔をしています。
ママ友も「急にごめんね」と遠慮がちでしたが、私は「いいの、いいの! ぜひ来て!」と押し切りました。
我が家に着き、リビングでおやつを食べ終えた頃、ママ友の子が目をキラキラさせて言いました。「ねぇ、〇〇ちゃんのお部屋見せて!」
娘はまたしても戸惑った表情でしたが、友達の勢いに押されるように、恐る恐る自分の部屋に招き入れました。
すると、その子が目を輝かせて言ったのです。
「わぁ、すごい! きれいで可愛いお部屋だね!」
「叱る」より「褒められる」の力
まさかの言葉に、娘は部屋を見渡して、目を丸くしていました。
実は、公園に出かける直前、私はこっそり娘の部屋をピカピカに片付けておいたのです。
この日を境に、娘の意識はガラッと変わりました。
友達に褒められたことが、よほど嬉しかったのでしょう。
いつ友達が来ても恥ずかしくないようにと、自分から進んで部屋を片付けるようになったのです。
完璧ではないけれど、以前のような状態に戻ることはもうありません。
親があれこれ言うよりも、友達に褒められたことが子どもの行動を変える。そんな意外な発見があった出来事でした。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。