噂話にモヤモヤする日々
保育園の送り迎えのたびに、必ず誰かの話題を持ち出すTさんというママがいました。
顔を合わせると、ここぞとばかりに「ねえ、〇〇さん、旦那さんと別居してるらしいよ! 知ってた?」と話題を振られます。
驚くというよりは、「またか……」というのが正直な気持ち。
相槌を打ちながらも、心のどこかでモヤモヤしていました。
誰かのいない場所で誰かの話をしていると、たとえ自分は発言していなくても、その場にいるだけで同罪になる気がして嫌だったのです。
“聞き役”もつらい
毎日のようにTさんから飛んでくる、誰かのプライベートな話題。
人の噂話って、聞いているだけでも疲れてしまうものですよね。
特に、事実かどうかも分からないことを一方的に聞かされるのは、ぐったりするような気分でした。
聞きたくないけれど、関係をこじらせたくない気持ちもあり、ただやり過ごすしかない……そう思っていた、ある日のことです。
思わず飛び出した無邪気な一言
いつものようにTさんが誰かの噂話を始めた時、私の口からふと、無意識に言葉が出てきたのです。
「あ、そうなの? 私、その人とけっこう仲いいから、今度本人に聞いてみるね!」
その瞬間、Tさんのマシンガントークがピタリと止まりました。
数秒の沈黙の後、「あ、いや、そういうのじゃなくて~……」と、Tさんは慌てて話題をそらそうとします。
私自身、本当に悪気なく、ただ純粋な気持ちで言ったつもりだったのですが、その場の空気が一瞬にして凍りついたのを感じました。
平和な日常にホッとする日々
それ以来、園で顔を合わせてもTさんは当たり障りのない話しかしなくなり、噂話を持ちかけられることはパタリとなくなりました。
おそらく私は、彼女の中で「危険人物リスト」に入ってしまったのでしょう。
意図せず、最強の防御を手に入れた気分でした。
「本人に聞いてみるね」は、私の平和な日常を取り戻す、まさに魔法のセリフだったのです。
真っ向から戦わなくても、笑顔と一言で断ち切ることもできるのだと実感しました。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。