知人A子さんが仕事帰りの終電で、酔っ払いに絡まれるという恐怖体験をした際、誰も助けてくれず心細い中、1人の学生風の若者がとっさに「母さん」と呼びかけて守ってくれた出来事。見知らぬ人の思いやりに救われ、人の優しさの尊さを深く感じたエピソードです。

終電での不安な時間

その日は仕事が遅くなり、終電に滑り込むようにして乗り込みました。
車内は人も少なく、私はホッとしながら席に腰掛けました。
ところが数駅後、酒に酔った男性が乗り込んできて、私の隣にドサッと座ったのです。
酒臭く、声も大きく、すぐに気分が重くなりました。

酔っ払いの絡みに困惑

しばらくすると、その男性がこちらを見て「ねえ、飲みに行こうよ」と絡んできました。
無視をしても肩を突いてきたり、しつこく話しかけてきたりして、心臓がバクバクしました。
周りの人も気づいているようでしたが、誰にも助けを求められず、その場から動けない孤独感と恐怖でいっぱいになりました。

思わぬ助け舟

すると向かいに座っていた学生風の若者が、スッと立ち上がり「母さん、こっちに座りなよ」と私に声をかけてくれました。
一瞬意味が分からず固まりましたが、若者は自然な仕草で私の荷物を持ち、隣の席に誘導してくれたのです。
そのやり取りを見た酔っ払いは「なんだ、息子かよ」とつぶやき、そのままウトウトし始めました。

胸に残った温かさ

駅に着いた時、私は思わず「ありがとう」と頭を下げました。
若者は照れくさそうに「いえ、大丈夫ですか?」とだけ言って降りていきました。
その背中を見送りながら、胸がじんわりと熱くなりました。
怖い思いもしたけれど、人の優しさに救われた夜。
あのひと言でどれだけ安心したか、今も忘れられません。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。