筆者の話です。幼稚園ママのランチ会で、毎回会社自慢をするB子。周囲はちょっぴり心のどこかでうんざりしながらも笑顔で合わせるしかない。ところがある日、控えめなママの一言で空気が一変しました——。

また始まった! B子の会社トーク

幼稚園のランチ会。毎回話題の中心はB子の「うちの会社、福利厚生がすごくてね! 給料は低いんだけどさ!」「上司が海外出張ばかりで〜」という自慢話。私たち専業ママやパート組は、「へえ、すごいね」と笑って頷くしかありません。最初の頃は素直に感心していたけれど、回を重ねるうちに心の中で少しずつため息が増えていきました。

「いいね!」しか言えない空気

B子は決して悪気がないということは、わかっていました。気前もいいし、人の子でも全力で遊んでくれる。でも、ママ会の時だけは……誰かが話題を変えようとしても、必ず最後は「うちの会社ではね」と戻ってくる。そんな調子なので、みんな次第にB子の前では“自分の話をしない”スタイルに。会話はB子の一人舞台、私たちは観客のようでした。

静かなママの、意外な一言

その日のランチ会には、珍しくC子さんという控えめなママが参加していました。いつもはお迎えの時も笑顔で挨拶する程度で、あまり深い話はしたことが一度もない人。B子が何気なく「C子さんはどんなお仕事してるの?」と聞いた瞬間、C子さんは少し困ったように「会社勤めなんですけど、〇〇社で企画をしています」と答えました。一瞬、時間が止まりました。〇〇社といえば、誰もが知る大企業。決して比べる必要はないのですが、B子の会社とは比べものにならないほどの規模です。

場の空気が変わった瞬間

「え!? すごくない!?」「CMでよく見る、あの〇〇社?」と誰かが確認すると、C子さんは「はい。でも子どもがいるので時短勤務で、全然すごくないですよ」と穏やかに笑いました。その控えめな言葉と落ち着いた態度に、場の空気がふっと和らぎました。B子も苦笑いしながら「へえ〜、そうなんだ」と話題を変えました。あんなに強気だったB子の声が、少し小さく聞こえたのが印象的でした。

謙虚さが人を引き立てる

その日以降、B子の自慢話は減りました。C子さんが特別なことを言ったわけではないのに、自然と“本当のすごさ”が伝わる。人の価値は、声の大きさでも肩書きでもなく、にじみ出る姿勢なんだと気づかされました。誰かと比べて頑張るより、静かに信頼される人になりたい。あのランチ会の帰り道、そう心に決めた私でした。

【体験者:30代・筆者、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。