深夜の愚痴タイム
週末の夜、子供たちを寝かしつけ、ようやく訪れた一人時間。
夫が出張中で不在だったこともあり、私は親しい友人に電話をかけ、ほっとしながらおしゃべりを楽しんでいました。
そのうち、気づけば話題は「夫への不満」に。
「うちの夫、本当に信じられないんだけど! 子供が熱出した時も、ゴルフは休めないとか言ってさ。全部私に押し付けて……」
感情が高ぶるにつれて声も大きくなり、いつしかリビングには私の声が響き渡っていました。
まさかの盗み聞き
友人が「わかる!」「うちも同じ!」と、共感してくれることで、さらに勢いづいた私。
「何度言っても聞いてくれないし、こっちがしてほしいことは何もしてくれないし、当事者意識が足りないのよ! ねえ、これって私の言い方が悪いのかな?」
と、愚痴は止まらなくなっていました。
その時、不意に背後から小さな声が聞こえたのです。
「……ママって、パパのこと、いつも怒ってるね」
びっくりして振り返ると、寝たはずの5歳の息子が、眠そうな目をこすりながら立っていました。
的確すぎる一言
まさか、こんなに近くで聞いていたなんて……。
「顔から火が出る思い」とは、まさにこのこと。
私は慌てて電話を切り、「どうしたの? 喉乾いた?」と話をそらそうとしました。
しかし、息子は私の目をじっと見つめ、さらに決定的な一言を放ったのです。
「パパは、ママが怒ると、いつも困った顔してるよ。ママがなんで怒ってるのか、パパはよく分かってないみたいだよ?」
その言葉に、私は息をのみました。
まるで夫婦関係の核心を突いているようだったからです。
関係性を見つめ直すきっかけに
たしかに、私はいつも夫に不満をぶつけるばかりで、夫が「なぜ私が怒っているのか」をきちんと理解するまで向き合えていなかったのかもしれない。
ただ感情をぶつけ、夫を追い詰めていただけだったのかもしれない……。
その夜以来、私は夫への伝え方を少しずつ変えてみました。
感情的になる前に、何が不満なのか、どうしてほしいのかを、冷静に具体的に伝えるようにしたのです。
すぐに全てが変わったわけではありませんが、夫も以前より耳を傾けてくれるようになった気がします。
子供が放った、たった一言。
それは私にとって、夫婦関係を見つめ直し、どう向き合うべきかを教えてくれた、忘れられないきっかけとなりました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。