誰かを好きになる気持ちって、止められないものですよね。理性では分かっていても、心が惹かれるままに進んでしまう……それが恋の醍醐味であり、時に悩みの種にもなります。今回は、筆者の友人が経験した、そんな恋の体験談をご紹介します。

親が反対する恋に落ちて

20代前半だった頃、私に初めてできた恋人は、夢を追いかける自由な男性でした。
彼は収入も不安定で、将来のプランも曖昧。
そんな彼のことを知るなり、両親は「やめておきなさい」と猛反対しました。

たしかに、冷静に考えれば、不安要素ばかりだったのでしょう。
それでも当時の私にとって彼と過ごす時間は、何よりも大切なものでした。

親の声より、心の声を信じて

親に反対されればされるほど、私はむしろ意地になって彼との関係を貫こうとしました。

デートの帰り道、親からの電話を無視して胸が痛む夜もありましたし、親には内緒で会っていることに後ろめたさを感じることもありました。

それでも、彼といるときの笑顔や安心感のほうが、私にとっては本物のように思えたのです。

だから、「これは私の選択なんだ」と何度も自分に言い聞かせ、それが正しい道だと信じていました。

甘くなかった現実

しかし、現実は甘くありませんでした。
彼の将来の展望はなかなか見えず、私たち二人の生活のリズムも少しずつ合わなくなっていきました。

やがてすれ違いが大きくなり、お互いの気持ちが離れていくのを感じました。
そして、別れは避けられないものとなってしまったのです。

悔しくて、切なくて、別れたあとはしばらく泣き暮らし、深く落ち込んだものです。

失恋がくれたもの

それでも不思議と後悔はありませんでした。

もしあのとき、親の言葉に従って別れていたら、私はきっと一生「あのとき別れなければ、どうなっていたんだろう……」と、未練を引きずっていたはずだからです。

自分で選び、自分で失敗した。
その経験が、私の芯を強くしてくれました。

恋の結末は親の予想通りだったけれど、そこで得たものは、親の言葉だけでは絶対に手に入らなかった、かけがえのないものでした。

今になって振り返ると、あの恋は失敗ではなく、むしろ私にとって必要な通過点だったと思えます。
自分の気持ちを信じて挑んだ時間こそが、今の私をつくっている。
あのとき泣いた自分に「よくやった」と言ってやりたい気持ちでいっぱいです。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。