親にとって、子どもは何歳になっても可愛いものです。筆者の友人・F加はシングルマザーで、一人息子を一生懸命に育てていました。そんなF加が大事にしていた息子の誕生日に起きたエピソードをご紹介します。

息子

私はシングルマザーで、息子が一人います。
息子の誕生日は11月。
毎年、誕生日だけは多少の無理をしても息子の欲しい物をプレゼントし、お祝いしてきました。

そんな息子も無事に大学を卒業し、社会人に。
以前のように一緒にいる時間は減ったものの、私は誕生日のお祝いを楽しみにしていたのです。

誕生日

夏が終わるころ、ちょうど息子と顔を合わせた私は「今年の誕生日は何が欲しい?」と聞いてみました。
すると、今までは欲しいものを驚くほど言っていた息子が「う~ん……別にないかな」と言ったのです。
「え? 何もないの?」と聞いても、息子は「あ、大丈夫、大丈夫!」と言って、仕事へ行ってしまいました。

私はとても寂しい気持ちに襲われて、気持ちが落ち込んでしまいました。

本音

落ち込んでいる私を見かねた息子は、ある日仕事から帰ってくると、おもむろに話し始めました。

「お母さんは今までずっと俺のことを第一に考えてきてくれた。自分の趣味や娯楽なんかそっちのけで、全部俺が優先だった。でも、俺ももう社会人になったんだから、母さんには今まで俺のために使ってきた人生を取り戻してほしいんだよ」

「大学まで行かせてもらって、俺は本当に感謝してる。だからこれからは母さん自身の人生を楽しんでほしい。友達と旅行へ行ったり、好きな人を作ったりしても良いと思うよ。俺のことはもう大丈夫だから」

成長

私は驚きましたが、息子の成長を嬉しく思ったのも事実でした。

「あなたのお誕生日をお祝いするくらいいいんじゃない? プレゼントは要らないなら、どこかで食事でもしようよ。それがお母さんの楽しみでもあるんだから」と言うと、息子はにっこりと笑って「じゃあ、俺の好きなお店にしよう!」と言ってくれました。

子離れ

私は確かに、息子の成長だけを楽しみに生きてきました。
しかし、息子が独立した以上、自分のこれからをしっかりと考えなければいけないと感じた出来事でした。

年を重ねて息子に負担をかけるのは嫌なので、いつまでも健康でいられるよう、ジムにでも通おうかと思っています。

【体験者:50代女性・会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:RIE.K
国文学科を卒業しOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。シングルマザーとして子供を養うために、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。