副作用
私は数年前に行った抗がん剤治療の副作用が凄まじく、頭髪はもちろん、眉毛、まつげなど、全身の毛がすべて抜け、年月が経った今でも薄いままの状態です。
特に頭髪は前髪だけが生えていないため、薄さを隠すため、いくつもの帽子を購入し、ウィッグにも挑戦しました。
しかし、ウィッグはなかなか合う物がなく、どうしても手軽にカバーできる帽子に頼っている状況だったのです。
息子が中学に進学し、部活動に入ったため、試合の送迎や応援などに参加する機会が増えました。
未だに免疫力が極端に低く、感染症には注意しないといけないため、どこへ行くにもマスクは手放せません。
帽子を目深にかぶり、マスクをしている『変な人』と思われないか、とても心配でした。
クレーム
私は同じ部活の同級生のママ友には病気のことを話していました。
しかし、上級生の保護者とは話す機会がなかったため、知らない人の方が多かったのです。
そんなある日、部活の保護者会が開かれました。
それぞれが自己紹介をすることになり、私が挨拶をしようとすると、いきなり2年生の保護者が文句をつけてきたのです。
「ちょっと! 話すときぐらい帽子取りなさいよ! コロナも落ち着いたのにマスクまでして、何なの?」
私は事情を話したのですが「そんなの知らないわよ! 非常識じゃない?」と言われてしまいました。
助け船
事情を知っている同級生のママ友が「そういう言い方はどうかと思います。非常識なのはそちらの方ではないですか?」と助け船を出してくれました。
顧問の先生も「私も事情は存じ上げませんでしたが、別に非常識とかではないと思いますよ?」と一言。
私に文句をつけてきた保護者は、こちらを睨みつけていましたが、そのままふくれっ面をして、教室から出て行ってしまったのです。
ショック
あんな言い方をされたのは初めてだったので、少しショックでしたし、中には私の状況を『非常識だ』と受け取る人もいるんだと思いました。
相手の状況をすべて理解することは難しいですが、他人を思いやる気持ちは大事にしなければいけないと思い知らされた出来事でした。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:RIE.K
国文学科を卒業しOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。シングルマザーとして子供を養うために、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。