息子と仲良しの少年Aくん
小学生の息子が所属するラグビーチームに、Aくんという仲の良いチームメイトがいました。
息子とはよくパスを回し合い、試合の後は笑顔でふざけ合う。
Aくんは誰から見てもチームに馴染んでおり、楽しそうに練習していました。
突然の欠席! 監督から告げられた退部の理由
ところがある日を境に、Aくんが突然来なくなったのです。
体調不良かと思いましたが、何週間経っても姿が見えません。
不思議に思っていた矢先、監督から理由を聞かされ、私は驚きました。
「実は……、Aくんのお母さんの強い希望で、やめたんです」
悔し涙を心配した母親の決断
監督の話によると、Aくん自身はラグビーを続けたがっていたと言います。
ある試合で自分のプレーが上手くいかず、Aくんは涙を流したことがありました。
しかし、それを見たAくんの母親は「チームに馴染めていない。あの子は苦しんでいる」と受け取り、やめさせてしまったというです。
監督は、本人いわく悔しくて涙を流していたこと、成長の機会として続けてみてはとAくんの母親に説得を試みたそうですが、「お母さんの意思が強く、Aくんともきちんと話す機会が持てませんでした」
監督は残念そうに語りました。
親ができる「大切な支え」とは何か
私は胸が締めつけられる思いがしました。
子どもの涙は、必ずしも「悲しい」からだけではありません。
悔しさや、もっと上手くなりたいという思いから流れる、前向きな涙もあるでしょう。Aくんにとっては、自分を奮い立たせるための涙だったのかもしれません。
母親には母親なりの、我が子を守りたいという強い思いがあったはずです。もしかしたら、ラグビー以外の場面で、私たちが知りえないAくんの苦しみを察していたのかもしれません。
それぞれの家庭にそれぞれの事情と判断がある。そう頭では理解しつつも、Aくんの意思が反映されないまま、一時的に大好きなラグビーから離れることになってしまった状況が、私は寂しく思えました。
子どもを心配する気持ちは理解できます。
でも時に「信じて見守る」ことこそ、子どもの成長を助ける大切な支えではないか、そう考えさせられる出来事でした。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。